ID:1488
頑張る40代!plus
by しろげしんた
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■落とし物 (後)
免許証を拾ったのは、今回で三度目である。
拇印を押した前回と、もう一回は6年ほど前だ。
その時は最悪だった。

拾ったのは今回と同じく12月だった。
ある日、什器の下に紙袋のようなものがあるのを見つけた。
しかし、その時は気にもとめなかった。
年末で毎日たくさんの商品が入荷していたため、それどころではなかったのである。

その紙袋に注目するのは、いよいよ暮れも押し迫った12月の末のことだった。
最初に発見した時から、もう2週間以上経過していた。
その頃になると商品の入荷も一段落していた。
「この間からあるんやけど、あの紙袋、何かねえ?」と、ぼくは売場の女の子に尋ねた。
「え、しんたさんが置いてるんじゃないんですか?」
「おれ、知らんよ」
「私も知りません」
「ゴミかねえ」
「かも知れませんね」
と、什器の下から紙袋を取り出し、開けてみることにした。

「あっ…」
中には手帳と小物が入っていた。
「誰のだろう?」と、手帳を開いてみると、そこから意外なものが出てきた。
運転免許証である。
今回と同じく、若い女性のものだった。
ぼくは再び売場の女の子に尋ねた。
「この人、知っとう?」
「知りません」
「困っとるやろねえ。すぐ知らせてやらんと」
ぼくはさっそく電話帳をめくり、その人の番号を探し当てた。

「もしもし、○○さんですか?」
「はい」
「こちらは○○店ですけど、免許証を見つけたんですが…」
「えっ!?」
一瞬の沈黙の後、相手は急に語気が強くなった。
「どこにあったんですか!」
「什器の下ですけど」
「何で今頃電話してくるんですか!?」
「何でと言われても、見つけたのは今日なんですが」
「私、無くしてから何度も、おたくの店に電話したんですよ!」
そう言われても、こちらにはそういう情報は入ってきてない。
仮にそういう情報が入ってきていたとしたら、当然探しただろうし、もっと早く紙袋を開けていただろう。

「警察にも届けて、再発行したんですよ。どうしてくれるんですかっ!」
『どうしてくれるんですか』と言われても、もうどうしようもない。
返す言葉もなく、こちらが黙っていると、相手は憮然とした口調で「すいませんでした。じゃあ、後で取りに行きますから」と言って、電話を切った。

善意で電話しているのに、まさか怒鳴られるとは思わなかった。
見つけるのが遅れたのは、確かにこちらの落ち度かもしれない。
しかし、そちらも何度電話したのかは知らないが、大切なものなのだから、電話で確認するだけではなく、実際に店に来て探すべきではないだろうか。
そんなことを考えていると、無性に腹が立ってきた。
さすがに、その日は一日、いい気分がしなかった。
12月15日(月)
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