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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■『華氏911』の真価
 台風16号が九州を縦断。今年はやたら台風が来るけど、今のところ福岡は水害には合っていない。風は吹いてるが雨量はそれほどでもないからだろう。
 外はもうビュンビュン風が吹いているのだけれど、今日は仕事を休んで(出張扱いなのでサボリではないぞ)定期検診の予約を病院に入れていたので、出かけないわけにはいかない。場所は川端町なのだけれど、直通のバスはないので、比恵までしげに車で送ってもらう。
 地下鉄に乗って、中洲川端で降りて外に出た途端、突風に吹き飛ばされそうになった。道を歩く人もマバラだが、差している傘の柄が折れてしまっている人もいる。こりゃ、傘なんか差せやしない、と、病院まで思いきって走る。雨は小振りとは言え、100メートルほどは走ったので、結構濡れた。しかもスリッパで出て来たので、病院に辿りついた時には鼻緒のあたりが緩くなってしまっていた。帰りはちょっと走れそうにもない。
 病院のドアを開けてみて、一瞬、キョトンとした。広い待合に、客の姿は誰も見えない。考えてみたらこの台風だからそれも当然なのだけれど、「待合はいつも患者でいっぱい」というイメージが刷り込まれていたので、急に異次元に放りこまれたような錯覚を覚えたのだ。
 茶髪の看護師さん(いいのか?)に案内されて検査服に着替え、尿検査だの採血だのレントゲンだの心電図だの胃透視だの、あちこち引っ張りまわされるが、いつもだとこれだけの検査を受ければ、順番待ちで軽く2、3時間はかかるものが、客がいないからスムーズに進むこと。わずか1時間で終わってしまった。問診の結果は「またちょっと糖が出てますね」。やっぱり運動量が減っているのがよくなかったのである。いや、食事の量も増えてきてるし、だんだん気持ちが緩んで来ているのだな。ちょっと黄色信号である。
 検査を終えて、外に出ようとすると、暴風はいよいよ激しくなっていて、今度は帰るに帰れないのである。しげに連絡を入れて、車で迎えに来てもらうが、これに時間がかかって、結局、昼になってしまった。
 そのあと、眼科に回るが、ここも客は少ない。けれどこちらは結構待たされた。今のところ異状はないとのことだが、次回は造影の検査もしてみようとのこと。実際、右眼と左眼とで視力に差が出てきているし、目の前がぼやっと薄白くかすんでいるので、悪化してないはずはないのである。


 帰宅してひと寝入りしたあと、夜、キャナルシティに『華氏911』を見に行く。
 カンヌ映画祭のパルム・ドール受賞で、それなりに期待はしていたのだけれど、内容は単純極まりなくて、「ぶっしゅだいとうりょうはせきゆがほしいのでせんそうをはじめました。けれどたくさんのひとがしんだのでよくないとおもいます」で終わりだった。
 いやホント、それ以上の内容が何もないのよ。それがかえって驚きだったね。マイケル・ムーアに期待したのが間違いだ、と言われるかもしれないが、もうちょっとは「深み」があるかと思っていたのだよ。政治的プロパガンダ映画だって批判もあるけど、そうだとしてもこの映画、ちょっと方法が幼稚すぎないか。これ見て初めて「ブッシュってそんな卑劣なヤツだったのか!」って憤ったヤツがいたとしたら、それこそ911以降、世界の何を見てきたのかってことになると思うけど。
 だいたい石油が云々なんてこたあよ、今更マイケル・ムーアに言われんでもみんなハナから気づいとることだなんって。それ知っててもブッシュに反対できねえから我々は腹立ててるわけで、ブッシュを本気で糾弾するつもりなら、その罪を告発するだけじゃ不充分だろうが。「ではどういう道を取ればよかったのか」まで示さなけりゃ、意味がないぞ。ブッシュは確かにバカかもしれないが、それを貶すしか能のないムーアも、バカ以下のバカってことにしかならないよ。ゴダールが「この映画はブッシュを利するだけだ」ってムーアを非難してた意見が一番当たってたんじゃないかな。
 つまりこの映画は、イラク戦争が、はっきりブッシュとアメリカと、アメリカに協力を示した国に石油を落としてくれたってことを証明しているわけで、これ、ウラ読みすれば「ブッシュの業績を称えた応援映画」として見ることも可能なのである。そこんとこにムーアは気づいてたのだろうか?

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08月30日(月)
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