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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■「ストーカー法」に引っかからないストーカーの仕方
 ちょっとこのことは日記に書こうかどうか、かなり迷ったのであるが、今更隠しておくのもどうかな、と思ったので、書いておくことにした。とは言え、各方面にメイワクかかるといかんので、固有名詞は匿名、ないしは仮名にしておく。
 今日、職場に一通のハガキが届いた。送り主の名前は一応、旧知の人物の名前が使われていたが、おそらく勝手に名前を借りられてしまったものであろう。内容は、私が本当は泥棒なのだとか変態なのだとか、下品で低劣な中傷なのだが、もちろん根も葉もない事実無根のものである。
 匿名ではあるが、差し出し人が誰かは承知している。十数年前、演劇活動を通じて知り合ったある人物で、かなりオタクな人である。『ファントーシュ』を創刊号から持ってたり、『アニメージュ』『Newtype』『宇宙船』は言うに及ばず、懐かしの『SFマガジン』『SFアドベンチャー』『SFイズム』『SF宝石』(^o^)『奇想天外』『ふゅーじょんぷろだくと』『OUT』『ふぁんろーど』『ぱふ』『リュウ』『DUO』『花とゆめ』などなど、その人の部屋の中は数々のアニメ、特撮、SF雑誌に埋め尽くされ、もちろんマンガの単行本も山と積まれていて、SF小説はハヤカワの銀背がズラリという年期の入りようであった。棚には怪獣、美少女、ミリタリーのフィギュアが処狭しと飾られ(市販のものに改造を加えた自作)、モデルガンの収集も押し入れに何10丁、オーディオ関係も当時の最先端機器を常に取り揃え、LD(当時はまだDVDはなかった)コレクションも既に何千枚という、私がこれまで出会ってきたオタクの中でも、最高の部類に属する超濃い目のオタク氏であった。仮に彼をオタ氏と呼んでおく。それだけのコレクションに相当する該博な知識の持ち主で、その点では尊敬に値する人であったのだが、如何せん、性格がむちゃくちゃ歪んでいた。
 ともかく、ヘタにアニメや特撮、演劇、映画などに造詣が深かったのが災いしたのである。若いころ、自主アニメの製作・監督をしたことがあり、当時、それが今や世界的なアニメ監督として評価も高い某氏や某氏などにアニメ誌上で賞賛された。そのことがその人をすっかり「プロ気取り」にさせてしまったのだ。若くして天狗になった人間が周囲から疎まれるのは世の常で、知識はただのヒケラカシとしか映らず、批評や意見はただの高慢としか解釈されなくなった。結局、当人に実力があるにも関わらず、オタ氏はアニメの道にも映画、演劇関係の道にも進まず(進めず)、関係者の間を渡り歩くような「アニメゴロ」「演劇ゴロ」になってしまった。今更言いたくはないが、その人が勝手な行動を取ってくれたせいで、私は熱愛するファンであった俳優のA氏とも縁が切れてしまった。
 それだけならともかく、他人が常に自分を陰で笑っている、と思いこんだ彼は、自分の気に入らない人物の周囲に、匿名で中傷のハガキをばら撒き始めたのである。その激情たるや常軌を完全に逸したもので、被害にあった人物は数10名、毎週何10通ものハガキを各方面にばら撒き(私に関するものでも100通以上に上る)、あいつはこんな変態だ、あいつはこんな人非人だと触れ回るようになったのだ。
 オタ氏と知り合った当初は、私は決して仲が悪かったわけではなかった。彼のそういう「行状」を知らなかった私は、多少エキセントリックな言動が鼻につきはしても、ユニークな人だな、くらいに軽く考えていたのである。
 ところが、世間に受け入れられない鬱屈がオタ氏の精神を蝕んでいったのだろう。その言動は次第におかしくなっていった。曰く、自分には霊の世界が見える、異次元との交流も可能だ、天候も自由に操れる、念じれば人の命を奪うことさえ……。
 正直な話、だんだんと気持ち悪さすら感じてはいたのだが、まあ日本は信仰の自由はあるのだし、それと人格は別であろう、とのんきに考えていた。「ああ、そうですか」と相槌を打っていれば、別にツボだの印鑑だの売りつけてこようとはしなかったし、実害はない、と高を括っていたのである。

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07月06日(火)
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