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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■多分今日の血糖値は馬鹿上がりだろう(T.T)。
 夕べ、しげに洗濯物を干しとくように言っといたのに、今朝洗面所を覗いてみたら、ほったらかしたままである。いつもしげは「干し方がわからん」とか言い訳ばかりして家事から逃げ回ってばかりいるので、昨日はまるで小学生相手に教えるように、具体的にどんなふうに干したらいいのか、実際にやってみせたのである。……冗談ではなく、私はしげに、「シャツとか干すときにはな、物干しにこうやって、袖を通して干すんだ」というように、バカ丁寧に教えているのである。そんなことまで教えないといけないのか、いくらなんでも自分の女房をバカ扱いしすぎてないかと驚かれる方もおられようが、ここまで丁寧に教えてもできないのがしげなのである。パートの仕事とか、金になることならするのだが、家事などはお金にならないので、自分の仕事と認識しようとしない。だから仕方なく、一日に何か家事をしたら日銭を渡すようにしていたのだが、それも段々サボるようになってきた。洗濯ばかりでなく、掃除も片付けも、何一つしたがらない。もちろん、それじゃ生活自体が成り立っていかないから、どんなにいやでも、少しくらいはやってもらわなければ困る。だからわざわざ、洗濯物の干し方まで、バカバカしいと思いながらも教えてきたのだ。けれど、もう何百回も教えているのに、一度もきちんとしたためしがない。
 どうしてそんな普通のことをしようとないの? と疑問を持たれる方もいらっしゃると思うが、私だってわけがわからない。それどころかこのことを一番疑問に思っているのは、しげ自身なのである。
 昨日も「洗濯したか?」と聞いたら、「ちゃんと干した」と言っていたので、またウソついてるんじゃないかと思って、洗面所に行ったら、やっぱり干してなかった。怒って「なんでウソつくんだよ!」と怒鳴ったら「ちゃんと干したのに!」と、自分は絶対ウソはついていない、と言い張る。それで、実際に洗濯機の前にしげを連れていって、洗濯物が入れっぱなしで干されていない様子を見せたのだが、しげは狐につままれたような顔になってしまった。「干したはずなのに!」。けれど、いくらしげが「干した」と言い張ったところで、現にやってないのは事実だから、反論できるはずはないのである。私はもう一度「やりなおせ!」と言って、居間に戻ったのだが、30秒もしないうちにしげも洗面所から出て来た。「洗濯は!? 今しがた『やれ』って言っただろ!?」と怒ったら、堂々と「だから干したよ!」と言った。……30秒で干し終えられるわけはないので、これは明らかにウソである。思わず「ふざけるな! なんでそんな見え透いたウソつくんだよ!」とまた怒鳴ると、しげも「だってホントに干したんだもん!」と涙声で怒鳴るのである。ウソをつく気なら、こんなすぐにバレるようなウソはつかない。しげは、“本気で”干したつもりになっているのだ。恐らく、起きたまま、「洗濯物を干した」夢を見ているのだ。しげはすっかり夢と現実の区別がつかなくなっているのである。「じゃあ、俺が見に行って、また干してなかったらどうする?」と聞いたのだが、しげは渋面を作って、「じゃあ、俺がウソツキでいいよ!」と開き直った。いいよも何も、実際にウソだと分ってるのを確かめる私の方がツライのだ。けれど、確かめないわけにもいかないので、また洗面所に行った。さっきから洗面所を行ったり来たりだ。もう書くのもいやなのだが、やっぱりというか案の定、洗濯物は干してなかった。ここまでしげの白昼夢に付き合わされると、私の頭の方がどうにかなってしまう。仕事疲れも溜まっていたので、「明日までに干してなかったらもうお前に給料渡さないからな!」と言いおいて、夕べは布団に潜りこんだ。
 朝になって祈るような気持ちで恐る恐る洗面所を覗いてみると、やっぱり洗濯物は干されてなかったのだった。いったい何回同じことを繰り返させられるのか。またしげを洗面所に連れていって確認させたのだが、しげは自分が干していたはずのものが干されてなくて、パニックを起こしてしまった。「なんで? ちゃんとやったのに!」
 「やったつもりになってるだけだって、いつも言ってるだろ!? だから『ちゃんとやった!』って言い張るんじゃなくて、注意されたら『もしかしたらやってないかもしれれない』って、自分を疑えって言ってるだろ!?」

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03月11日(木)
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