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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■ヤンキーたちの好きな戦争/『日露戦争物語』1巻(江川達也)/『探偵学園Q』1巻(さとうふみや)
 今朝のスポーツ新聞各紙、米国防総省が対テロの報復として大統領に核兵器の使用を進言したと報道。
 見出しはどでかく「核戦争か?」と煽っているが、アナタ、せっかく盛りあがってる大統領人気、それを一気に打ち消してしまうようなアホなまね、ブッシュがするわけないやん。
 まあこの報道がガセって可能性もあるのだけれど、一般誌は見事なくらい全くこの件に触れていない。
 人心に騒乱を起こしたくないという判断なのか、単にウラが取れなかっただけなのか、それも判断はつかないが、本気で「核戦争」の勃発を危惧する必要はないだろう。
 ……余裕があるから記事にもできるんだよな、スポーツ誌は。テロ発生以来、一週間が過ぎたが、マスコミも一般人もみんなこの状況を「楽しんでる」ねえ。全くどうしてこんなにみんな「戦争」が好きなのかね。

 「楽しむ」とか「戦争が好き」なんて言ったら、かえってキリキリと顳に青筋立てて怒り出す方もいらっしゃるかもしれないが、人間は自分が意識しているしていないに関わらず、それがたとえ逆境であろうと状況を楽しんでしまうものである。
 アメリカ本国で顕著なことであるが、今、テロの報復が市民レベルでイスラム教徒や関係の施設を対象に行われている。
 中には、「オサマ・ビンラーディンに顔が似ていた」ガソリンスタンドの店員とか、「アラブ人に似ていた」インド人とかが、トバッチリを食らって殺されたり乱暴を受けたりしているのである。
 普通、マットウな教育を受け、ごく普通の知性を持ちあわせている人間ならば、イスラム教徒がみんなテロに走ってるわきゃないってことくらい見当が付きそうなものだ。アメリカ人がどんどん狂っている、と判断する識者が現れるのも当然と言えば当然だろう。
 でも、本当に彼らは興奮のあまりトチ狂っちゃったのだろうか?
 関東大震災の際、日本人が朝鮮人の暴動を恐れて虐殺を行った集団心理、さてあれを「狂気」のヒトコトで片付けることが果たして可能か。
 あのとき、「日本人は朝鮮人を差別している」という自覚があるから、「朝鮮人の暴動」というデマゴーグには根拠があると多くの人が信じた。
 「アラブ諸国をアメリカは不当に迫害している」「イスラム教徒はみな危険だ」、もともとそういう思いがあるからこそ、“アメリカからアラブへの”無差別テロが頻発しているとも言えるのではないか。
 日頃の鬱屈を発散する対象を人は求める。それが「公明正大に」行っていいということになれば、人は日頃の反感、偏見、疑心暗鬼、そんなものを一気にぶつける。
 間違っちゃいけない。
 例えばスポーツは戦争の代償行為として生まれた。
 もともと人間の闘争本能は「戦争」を欲しているのである。
 アメリカ人は「やられたからやり返す」と思っているのかもしれないが、今までは「やられなかったからやり返せなかった」だけだ。
 「持ってる兵器は使いたい」で、原爆を二発も日本に落としたことを想起すれば容易に知れよう、あれは戦争終結のための手段などではなく、戦争終結を口実にした「実験」であり「力の行使」に過ぎなかった。
 べつにアメリカ人に限らず、人間はみんないつでも機会さえあれば、差別し、迫害し、苛めさいなむ「欲望のはけ口」を探し求めている。だからアメリカは「ただのテロ」を「戦争」にまでグレードアップさせたのだ。
 今、世界は「戦争を楽しんでいる」。
 否定できるか。

 最近、テレビではパキスタン、アフガニスタンの両国で診療所を経営しているNGO「ペシャワール会」の医師、中村哲さんの露出が増えてきている。
 政治的な動向だけではなく、現地の民間の実情を知る関係者が少ないということなのだろう。中村さんは一貫して大旱魃で住民が水も食料もなく飢えている実態を訴え、「報復は事態の解決にはならない。住民の虐殺にしかつながらない」と警鐘を鳴らしている。
 でも、報道はこのコトバをただの「平和主義的発言」としてしか捉えてないみたいなんだよなあ。
 そうではなくて、テロ組織もタリバン政権も、アメリカが報復攻撃に出れば姿をどこかに隠すに決まっている。だからこそアメリカは「今度の報復は長期化する」と明言しているのだ。

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09月19日(水)
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