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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■『イノセンス』カンヌ上映。
 よくネットでは前作『攻殻機動隊』を見ていないと分らない、という批評が横行していたけれども、そりゃあ、草薙素子がどういう存在であるのかとか、1作目を見ていれば「わかる」のだけれども、だからと言って、『イノセンス』を見ただけではわけが分らない、ということにはならない。それを言い出すなら、欧米の文化を知らない我々には海外の映画は「一切分からない」し、東京の人間には大阪人や九州人の感覚が「絶対に理解不能」だし、個人の考えていることは他人には「ほんのひとカケラも見当がつかない」のである。もちろん、そういう次元での「理解不徹底」は常に存在していることは確かなのだけれども、それを持ち出していい場合と、不必要な場合とがある。
 「1作目を見ていないと『理解不能である』」という言い方は、映画について語ること自体を拒絶している。1作目を見ていないからこそ、「何かが伝わる」こともあるのだ。こういうモノイイをする人というのは、たいてい情報に振り回されているだけか、知的スノビズムに陥っているだけだから、あまり相手にしないほうが無難なのである。……『エヴァンゲリオン』のブームの時に、やたらいたタイプの痛いオタクさんですがな(^_^;)。

> Mamoru Oshii on his narrative intentions: “for Innocence, I had a bigger budget than for Ghost in the Shell. I also had more time to prepare it. Yet despite the economic leeway, abundant details and orientations, it was still important to tell an intimate story. [...] Personally, I adore the quotes in the film. It was a real pleasure for me. The budget and work that went into it contributed to the high quality of imagery. The images had to be up to par, as rich as the visuals.”

訳:「『イノセンス』では、『攻殻機動隊』の時よりもずっと大きな予算が組まれました。準備のための時間もたっぷりありました。けれど、経済的な余裕があるにも関わらず、ディテールや方向付けが膨大になったのは、物語の本質を語るにはそれがやはり重要だったからです。……個人的にぼくは、映画に引用を持ちこむことが大好きです。それがぼくにとっての一番の楽しみなんですね。それに費やした予算と仕事は、映像をハイ・クォリティなものにすることに寄与しています。イメージは基準に達するものでなければならなかったし、映像も同様です」

> Mamoru Oshii on Godard: “This desire to include quotes by other authors came from Godard. The text is very important for a film, that I learned from him. It gives a certain richness to cinema because the visual is not all there is. Thanks to Godard, the spectator can concoct his own interpretation. [...] The image associated to the text corresponds to a unifying act that aims at renewing cinema, that lets it take on new dimensions.”

訳:「やたら他の作家さんの引用をしたがるのは、ゴダールの手法です。お手本となるものは映画にはたいへん大事で、ぼくは彼からそのことを学びました。映像がそこに介在していないからこそ、映画にある豊かさが生まれます。ゴダールのおかげで、観客は自分自身の解釈を模索できるんです。……映画を活性化させたくて、新しい表現を切り開こうとする試みを統一的にやろうとすると、お手本によってイメージを作りあげることは、ちょうど具合がいいんですね」

> Mamoru Oshii on animation: "I think that Hollywood is relying more and more on 3D imaging like that of Shrek. The strength behind Japanese animation is based in the designers' pencil. Even if he mixes 2D, 3D, and computer graphics, the foundation is still 2D. Only doing 3D does not interest me."

訳:「ハリウッドは『シュレック』のようにますます3D映像に依存していくと思います。日本のアニメーションを支えている強さというのは、アニメーターたちのエンピツに基盤があるんです。たとえ2Dや3D、コンピューターグラフィックスが混在していても、そのおおもとはまだ2Dなんです。3D映像を作ることだけはぼくには興味がありません」


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05月21日(金)
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