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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■スタジオジブリ、金のオゼッラ賞
 『ハニー』は企画から何から、「オタク」にしか観客対象をしぼってなかった映画だから、そのオタクから厳しい評価が下されてしまったら、惨敗も必至、撤退も余儀ないことだとは思うけれども、なんかもう、世のオタクどもってさ、えらそうなゴタクは並べるくせによ、単に「心が狭い」だけで、本気で映画も特撮もアニメも愛してなんかいやしないんじゃないかって気がしてくるよ。映画を見もしないで「サトエリだし」「アンノだし」で中身決めつけてた意見がどれだけ多かったことか。
 そりゃあ確かに私だって「サトエリ=ハニー」にはムリがあるとは思う。けれど、「事前情報好き」のオタク諸氏ならば、各種インタビュー記事やキャンペーンなどを通して、庵野監督が、佐藤江梨子が、この映画にどれだけ「愛」を注いで没頭していたか、気が付かないはずはない。そこに意気に感ずるものがなくて何がオタクか。つくづく感じることだけれども、かつて岡田さんが展開していた「オタクエリート論」は完全に空中楼閣と化してしまったのだ。今、日本に蔓延してる「自称オタク」の大半はただのミーハーかスノッブだ。流行を追うようにあのアニメからこのアニメと渡り歩いて、空虚な自分の心を満たし癒されたいと思ってるだけで、文化総体としてのアニメ、特撮、映画という表現そのものを愛しているわけじゃない。「俺、オタクだけど、『ハニー』やアンノにも、もともと興味ないし」って人、だからアンタはオタクじゃないんだって。
 『CASSHERN』が成功し、『ハニー』が失敗したという事実は何を物語るか。「本気で」オタクをターゲットにした映画は今後作られなくなるということである。『CASSHERN』が成功したのは明らかに「オタク以外の観客」を取り込むことができたからだし(オタク映画であんなにオシャレな女性客が殺到した風景を私ゃ見たことがない)、リメイク映画のラッシュだって、かつてのファンだけを対象にしているわけではなく、さまざまな「新しい観客層」の開発を試みようとしている。商売上、それは仕方がないことだけれども、その分、作品の中から「冒険」が消え、「センス・オブ・ワンダー」が消えていくのだ。
 製作母体が消滅して、『ハニー』の続編は作られなくなってしまった。それどころか、庵野監督が今後作品を作っていけるのか、心配になってきた。『エヴァンゲリオン』のあと、『彼氏彼女の事情』、『式日』、『流星課長』と、決してヒットしてきたとは言いがたい監督作品を見れば、そろそろ「遺産」も尽きたかという気がしてくるのである。かと言って、『トップをねらえ2』(監督はしてないけど)はないよなあと思う。できれば大向こうを唸らせるような波瀾万丈なSFアニメをこそ作ってほしいと切に願うものなのだが。

09月12日(日)
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