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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■「ストーカー法」に引っかからないストーカーの仕方
 例によって例のごとく、オタクのトラウマとなったあの『エヴァンゲリオン』騒動のときには、オタ氏は完全にアレにハマッていた。どれくらいかというのは、それこそ1話放映されるたびに真夜中に必ず電話がかかってきて、アダムの正体はどうの、補完計画とは何か死海文書とはどういうものか、とウンチクを垂れまくるのである。「明日仕事なんですけど」と言って電話を切ろうとしても「こんなこと話せるのはアナタだけなんです」と泣きつかれてしまって、無下にも断れなくなってしまう。ヘタすりゃ3時、4時までお喋りにつき合わされていたが、そのころ私がカラダを壊したのは、確実にこの人のせいもあった。
 そんな風に私に甘えておきながら、オタ氏が『エヴァ』のLDボックスを予約しないで買い損なったときには、私が入手したことを知った途端に激昂して、「アンタにエヴァの何がわかるか!」と怒鳴ったりするのである。そんなヤツアタリをされたって、私にはどうしようもない。あと、吉田秋生の絵柄が大友克洋の影響を受けて変化したとき、そのことを言ったら、吉田秋生ファンで大友克洋嫌いのオタ氏、やっぱり激昂して、そのあと泣き出してしまった(-_-;)。
 つまり、オタ氏は常に自分の意見は正しいと思いこんでおり、批判を一切許そうとせず、反駁されればヒステリックに騒ぎ出すという、痛いオタクの典型のような人だったのである。実際、一度ヒステリーを起こすと、髪を振り乱し、奇声を上げ、壁に頭を打ちつけ、全く手が付けられなくなっていた。しかし私は、そんなオタ氏を見ながらも、まるで『山月記』の李徴のようだ、と思い、その姿に哀れみさえ感じて、なかなか縁が切れなかったのである。
 しかし、ある日、オタ氏の家に遊びに行って、セーラー服姿に女装した彼に出迎えられてから、さすがに腰が引けた(~_~;)。いやね、出迎えられただけじゃなくて、まあ、その、抱きつかれちゃったし。言っておくが、私にはそちらの趣味は一切ない。断じてない。慌てて逃げだしたが、そのときはかなり乱暴にオタ氏の手を振りほどいたこともあって、そのあとの関係が気まずくならざるを得なかった。
 それから少しずつオタ氏とは距離を置くようになったのだけれども、私に関する中傷のハガキが職場やその周辺に出回り始めたのもそのころからである。かわいさ余って憎さ百倍といったところか。何しろそんな事件は「オタ氏の周辺でしか起こらない」のだから、犯人が誰かは一目瞭然であった。イタズラ電話が増え、電話をナンバーディスプレイにして、非通知電話はカットするようにした途端、オタ氏からの電話もかからなくなった。どうやらイタ伝もオタ氏の仕業だったようである。そして「被害者」が私一人ではなかった、ということも段々とわかってきた(実は今日、ハガキを受け取った時も、そばにいた同僚が、偶然にも、その人の被害者で、「アッ、それ、○○氏のハガキじゃないですか!?」と言っていた。全く、いったい何十人、何百人の人間が被害にあっているか、知れたものではない)。
 しかし、警察に何度足を運んでも、誰一人としてこれを事件として取り上げてはくれないのである。名誉毀損か何かに当たるんじゃないか、と思うのだが、ともかく、たとえどんなにオタ氏が犯人である、と主張しても、物的証拠はないのだ、と言って断られる。100通、200通、ハガキをばら撒かれようが、それが本人の名前でなく、他人の名前である以上は(私の名前で他人の中傷を送られたこともあった)、責任はその「名前の」送り主に存するものであって、オタ氏には何の関係もない、という解釈を警察は主張するのである。そのオタ氏、状況を撹乱する意味もあったのだろうが、なんと「自分に対する中傷を私の名前でもばら撒いていた」のだから、オタ氏のことを知らない人間は、私が犯人なのか、オタ氏が犯人なのか区別がつかないようにもなっていたのだ。
 ありがたいことに、私の知り合いで私の方が犯人だと疑った人はただの一人もいなかった(事件はあくまでオタ氏中心で、私の知らない人も被害にあっていたのだから、当然なのだが)。ところがそのことを警察に話すと、「つまりあなたは犯人だと疑われてもいず、実質的に被害にはあっていないのですから、告訴はムリです」と言われてしまった。

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07月06日(火)
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