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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■水害という名の人災/DVD『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX/笑い男編』
なんて特撮番組のタイトルをモジってる場合ではないのだ。
ウチがこの分じゃ、4年前に死人も出た一番被害のでかかった姉の店がどうなってるか分らない。
果たして電話線が繋がってるかどうかの不安もあったが、ともかく店に電話を入れてみる。電話口に出たのは姉ではなく父。
「そっちはどう? 大丈夫ね?」
「大丈夫じゃない!」
いや、いきなり怒られても。やっぱり4年前同様、床上浸水。泥水が一気に流れこんできたそうだ。
ともかく片付けの手伝いに行くことを伝えたが、水が引かないことには車が出せない。テレビではバスも地下鉄運休とのこと。あとはタクシーでも拾っていくしかないが、もう一度外の様子を見ると、どうやら水自体は引いているような様子である。少し待てば車にも乗っていけそうだ(と言うか、その前に車が動くかどうかを確認しないといけない)。
駐車場に降りて、車のドアを開けた途端に泥水がザバー。シートまで見事にぐっちょり濡れている。これはすぐに掛けつけられないと、しげに頼んで少し遅れる旨、店に電話をさせる。慌ててたので携帯を持たずに出て来てしまっていたのだ。
ともかく水を出さねばと、雑巾で拭きとって行くが、どこかに水溜まりができているのか、拭いても拭いても水が流れてくる。下に置いておいた傘もゴミ箱もファブリーズもみんな水浸しである。
一番悲しかったのは、しげに貸してた長山靖生の『偽史冒険世界──カルト本の百年』をしげがシートの下に落としたまま、コロッと忘れていたことだ。ともかくしげは本を大事にすることをしないが(結婚する前、私がプレゼントした本を質屋に売っぱらってたこともある)、それを見つけてもやっぱり「ごめん」の一言もないのである。
幸いなことにエンジンは何とか動いた。でもブレーキをかけたりすると、どこかから「ぐもっ」なんて音がする。いきなり爆発したりしないだろうな(-_-;)。 車を近くのガソリンスタンドで洗車してもらって、姉の店に急ぐ。
しげ、スタンドで待っている間、しきりに劇団のみんなと連絡を取り合っている。よしひと嬢はJRが動かなくてこちらに向かえずに困っているらしい。ラクーンさんも会社が水浸しとかで来られない旨。他のメンバーも軒並み遅刻とのこと。
「どうせみんな遅れてるんだから、お前も遅れたっていいだろう。店の片付け手伝えよ」
返事がない。聞こえない振りをしているか、どう返事しようか考えているうちに何を質問されたか忘れてしまったのだろう。
「練習終わったら店に来るのか?」と聞いたら、「よしひと姉様を迎えに行かないと」と言う。
どういう理屈だか分らない。今は普段の状態ではないのだ。身内が被害にあってるってのに、どうして芝居の練習(真剣にやってるならともかく、所詮は遊び感覚なんだから腹が立つのである)を優先できるのか。
店の前まで来ると、しげ、いかにも素っ気無い声で「ここで落とせばいいやろ」と言う。どうやら本気で片付けを手伝う気はないようなので、もう無視して降りる。
11時を回っていたので、もう水は引いているが、店の壁に水が来た跡が残っている。床からほぼ30センチ。前回が50センチほどだったから、前よりはマシというところだが、それこそ五十歩百歩である。
水が引いたと言っても、床に近い戸棚の中は依然泥だらけ、店の奥の部屋はまだ泥水が1センチほど残っている。こりゃそう簡単に掃除できるものではないというのが一目でわかる。
着くなり、父から「しげさんは?」と聞かれた。「そのうち来ると思うけど」と誤魔化したが来ねえだろうな、多分(実際来なかった)。
4年前の洪水では、店の椅子が水に漬かって電機系統がダメになり、全て買い換えということになってしまった。そのときは店に姉しかいなかったから仕方がないのだが、今回は父が孤軍奮闘。洪水の危険があると見るや、朝一番に店に駆け付けて、あのバカ重い椅子を一人で持ち上げてブロックの上に乗せて、流れこんでくる水から守ったのである。70歳近いってのに、腰は大丈夫だったのか(^_^;)。
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07月19日(土)
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