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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■すっ飛ばし日記/魔界な男たち
 しかも演じてる長塚京三がもう、どうしようもない。ただの優しいおじさんだ。セリフにも殺陣にも鬼気迫るところがカケラもない。こないだ東京ですれ違ったときの方がよっぽど雰囲気怖かったぞ。又右エ門にも胤舜にも但馬守にもちゃんと戦うモチベーションを与えて描写してたのに、なんで肝心要の武蔵をこんなチョイ役に使うんだよ。
 しかも、武蔵倒すの、十兵衛じゃないし(T-T)。
 でさあ、一応ヒミツってことらしいから、原作にない最後の魔界衆、隠しておくけどさあ、なんで大ボスがアレなんだよ。整合性も説得力もねえだろう。
 なんでこんな破綻が起きちゃったかって考えてみるとさあ、やっぱ「深作欣二の呪縛だなあ」としか思えないんだよね。天草四郎をメインに立てたりするような原作の改変、深作版からそのまんま頂いてるしねえ。
 でも、それやっちゃうと「絶対に面白くならない」こと、平山監督にはわからなかったのかなあ。
 「剣豪対剣豪」のドラマは次の十兵衛対但馬守で完結してしまう。しかも今度の天草四郎には「髪切丸」の忍法もない。装飾に凝って見せたって、盛り上がるものでもない。蛇足だけのシーンを見せられる方はもう、ひたすら苦痛だ。

 けれど、それだけの致命的な欠点があるにもかかわらず、私はこの映画を嫌いになれない。少なくとも細川ガラシャがHするためだけに蘇って腰ばっか動かしてたチンケで糞な深作版に比べりゃ、何百倍も面白いのだ。
 クボヅカがどうのってことに拘ってる阿呆には絶対に分からない、時代劇の魅力が横溢しているのだ。
 あのロングでじっくりと見せる殺陣の数々、カメラが寄ってばかりで殺陣がどうなってんだか分らない『五条霊戦記』と比べてみればいい。柳生但馬を演じた中村嘉葎雄は、『キネ旬』で「ぼくは殺陣がヘタだから」と卑下して語っていたが、ほかの役者の誰よりもその剣さばきは早い。私は劇場で何度息を飲んだことか。劇場に行くほどでなし、レンタルビデオでいいや、とか考えてる連中がさ、テレビモニターの小さな小さな画面で「なんだつまんねえ」とか言うんじゃないかと思うと、私ゃ涙が出そうになるよ。
 そして死に行く女たちのエロチシズム。クララお品役の麻生久美子の妖艶さと来たらどうだ。アレで勃たなきゃ男じゃないぞ。

 ……でも実際の話、劇場に足を運んでるのって、圧倒的に窪塚ファンが多いんだろうなあ。後ろにいたいかにもアタマ軽そうなバカップル、ラストで「何これ?」と不思議がってたけど、これはお前らのための映画じゃないんだよ(怒)。


 帰りにコンビニに寄って夜食を物色。
 ついでに永井豪『黒の獅子』2巻(完結)を買う。
 アイデア自体は好きだったんだよなあ。戦国時代を舞台に、不死身のサイボーグ、ビリィ・ザ・キッド、張飛翼徳、ユリシーズらが地球を襲う「白魔」の手で蘇えらせられる(なんか魔界転生みたいね)。
 でも、似たようなネタの『ズバ蛮』の面白さに比べて『黒の獅子』がどうにもつまらないのは、もうこのころの永井豪の絵から「若さ」が消えていたからである。本作には習作時代のオリジナル版があって、「永井豪展」で以前原稿を見たことがあったのだけど、やっぱりそっちの方が面白かったのだった。

05月16日(金)
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