ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■11 牢獄
「やっほー、ひっつん。お届け物だよ」
「ひっつんは止めろ」
 窓からの高い声に振り返ることなく、机に向かう日番谷は低い声で答えた。しかし声の主は臆することなく日番谷の机の前に来たが、顔がようやく見える程度だった。
「じゃあ、チビシロ」
「てめえもチビだろ草鹿……ひっつんでいい。むしろそれにしてくれ」
「なら、ひっつん、これにハンコ押して」
 顔を見づらいからか、やちるは横に回り込むと日番谷の隣に立ち、書類を差し出した。顔を覗き込んで、笑いかけてくるやちるに、日番谷はいっそう眉間の皺を深くする。
「皺寄せてばかりいると、取れなくなるよ」
「構わねえよ」
「乱ちゃんはいないの?」
「松本はちょっと現世に行った」
「そっかあ。寂しいね」
「仕事がはかどるから大歓迎だ。草鹿、ちょっとこれ食って待ってろ」
 書類をざっと読んで更に眉間の皺を深めた日番谷は、引き出しを開けると小さな袋を取り出した。受け取ってやちるが中身を見ると色とりどりの金平糖が入っている。やちるは花が開くように微笑んだ。それを見て日番谷は僅かに眉間の力を緩め、脇に置いてある椅子をやちるに勧めた。やちるは飛び乗って腰掛ける。
「他の奴らには言うなよ」
「内緒にしてるの? 乱ちゃんは怒らないと思うけどな」
「いや、隊の菓子箱からかっぱらってきたから、かなりまずい。それに他の隊長にばれると、奴ら、子供扱いしやがるからムカツク」
 書類をぱらぱらとめくりながら不機嫌そうに話す日番谷に、やちるは首を傾げた。そして、金平糖を一粒ずつ大事そうに囓りながら、少し考え込むように目を伏せる。

「ねえ、ひっつん」
「何だ」
「ひっつんは、小さい頃にここに来たの」
「そうだ」
「なら、何十年も生きてるよねえ」
「数えてもいないけどな。草鹿もそうだろ」
「うん。あたしも何十年も生きてる」
 やちるは目を上げた。日番谷は相変わらず不機嫌そうな表情で書類を読んでいたが、ちらりとやちるに目線を向けた。それに促されて、やちるは言葉を続ける。
「この間、隊に入っていない下位の人達と組んで仕事をしたんだけどさ、その中に一人、死んで十年足らずっていう人がいたのね」
「へえ。死んですぐに学院に入ったのか。やるじゃねえか」
「そう。ただね、見た目は大人の人なんだけど、言うこととかやることとか、どうにも変なんだよ。まだ不慣れな感じ。なのに、あたしに向かって、子供のくせにって言ったりして」
「言動がガキのくせに、お前をガキ扱いするってことだな。それにしてもお前、副隊長って言ったか、ちゃんと。よく更木がそいつを殺さなかったな」
「剣ちゃんは別のお仕事でいなかったから。ただ、一緒にいたつるりんがぼこぼこにしてた」
「命拾いしたのかどうか疑問だな」
 日番谷が天井を見上げて、少し笑った。やちるもその光景を思い出して、笑う。そのとき一角はこめかみに青筋を浮かべて怒鳴っていた。

 てめえ、副隊長に何て口ききやがる!
 副隊長が何十年生きてると思ってるんだこのガキが!

 一角が気遣ってくれたことにやちるは素直に喜んでいたし、それ以前に、その死神の言動に対して腹を立てていたわけではなかった。けれど、これまで少しずつ積もっていた、疑問にすらなっていないことがふと表面に出てきたことも確かだった。
「まだ数年しかここにいないんだから、不慣れなのは仕方ないんだ。ただ、なんだか、体も小さいあたしの方が、年上っていうのが不思議だなあって」
「よくあることじゃねえか」
「そうなんだけどね。ただ、あたし、何十年も生きているから、戦いに慣れているし、とっさにどう動くかとか、どうすれば上手くいくか、とか分かるんだけど、でも、どうしてまだ子供なんだろう」
 引き出しから隊長印を探していた日番谷は、目線だけをやちるに向けた。やちるは相変わらず、幼い、子供のような表情をしていたが、眼の光だけが違った。

 眼はとても静かに光っていた。

「他のみんなと違って、遊びたいっていうのとか、お菓子食べたいっていうのが強いみたいだし。そういうのって、生きてる年の数は関係なくて、見た目みたいなんだよね」

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11月11日(日)
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