ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■01 前兆
華奢な肩が震えていた。地面についた両腕は身体を支えられるのかと思うほどに細い。全体的に小さな身体はそれでも一歩も退かず、巨体の門番と向き合っていた。
「困ったのう……覚えはないのだが」
「ならばここで通りかかる人々に問い続けることをお許し頂けませんか」
「それも……いや、俺にそれを許す権限はねえからなあ……」
門番の戸惑いを含んだ言葉に、女性はがっくりと項垂れた。細い首が折れるかと思い、白哉は一歩踏み出した。その足音に門番が振り向き、慌てたように道をあける。
「朽木様、どうなされたんで」
「いや」
顔をわずかに上げた女性から目を離さず、白哉は門番に言う。
「通りかかっただけだ。何があった」
「それが……」
門番が口籠もったそのとき、白哉を見上げた女性と眼があった。
吹き荒れていた木枯らしがぴたりと止んだ。
「そなた、何があった」
手で門番の言葉を制すると、真っ直ぐに女性を見て白哉は言った。そしてふと気づき、白哉は女性の前で片膝をついた。
「び、白哉様、お召し物が」
付き従っていた者が背後で慌てた声を上げた。周囲の人間のどよめく気配がした。しかし白哉はただ、女性の大きな眼を見ていた。
この眼を知っている、と白哉は心の中で思う。
これは求めている眼だ。何を。何かをただひたすらにたった一人で求める眼。
「何があった……そして、そなたの名はなんという」
「…………緋真と申します。私の……過ちで行方知れずとなった妹を捜しております」
透明な声が、細く、しかしはっきりと言葉を響かせた。その響きは白哉の中で更に大きく響き、それは柔らかく、そこはかとなく哀しい和音を奏でる。
白哉はいつかの、幼なじみの青年の言葉を思い出した。それが今、現れたということを彼は唐突に理解した。
白哉の中から木枯らしの凍るような音が消え、静かに和音が響き渡る。これが何の兆しなのか、これから先どうなるのか、白哉は何も知らない。ただ、何かが自分の中で動き、仄かな熱を発し始めたことを白哉は感じていた。
もしかしたら勘違いかもしれない。一生得られないものをただ求めているだけなのかもしれない。このどこか哀しい和音そのままに未来はあるのかもしれない。しかしそれでもいいと白哉は思えた。一瞬、父の母の思いが脳裏をかすめる。白哉は一度眼を閉じ、両親の顔を思い浮かべて、詫びた。
目を開けると、白哉がずっと求めていた眼が彼の姿を映している。
「……判った。緋真よ、私が力となろう。私の屋敷へ参れ。客人として滞在すればよい」
緋真の目が大きく見開かれた。
「び、白哉様。屋敷に流魂街の者を入れるなど」
「私が客として招くのだ。何か問題があるか」
「し、しかし」
慌てて止めに入ろうとする従者を一睨みで黙らせ、白哉は再び緋真の顔に向き直る。緋真は呆然としていたが、目が合うと我に返ったように平伏した。
「あ、ありがとうございます。本当にありがとうございます」
埃にまみれた、それでもなお美しい黒髪が地面に触れている。白哉は遠慮がちに黒髪に手を伸ばし、触れる直前で手を止めた。その手を握るとそっと引き、立ち上がる。
「よい。顔を上げろ。屋敷へ向かう。そこで詳しく話を聞こう」
「はい……ありがとうございます」
緋真は顔を上げ、白哉を見上げるとふうっと、綻んだ花のように微笑んだ。細められた眼には涙が満ち溢れ、そこに映る白哉の姿はゆらりと揺れる。
白哉は何も言えずに、ただ自然と緋真に手を差し伸べた。
色々と捏造の多い話です。夜一さんや喜助さんが幼なじみかどうかも微妙なら(一応、幼い頃のことを語った場面もありましたけどね)、志波家兄妹が幼なじみかどうかなんぞ判りませんからね。まあ、没落前なら知り合いだったかなあ、なら幼なじみなら良いなあなどとつらつらと思いつつ書いておりました。年齢差も知りませんが、びゃっくんが一番下だとなんか良いなあと思いつつ以下同文。まあとにかく捏造です。
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11月01日(木)
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