ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■『女性死神協会 会議中05』
休憩をはさんで通りが更によくなった七緒の声に砕蜂が鷹揚に頷く。そして無駄のない動きで、計画が書かれた紙を全員に示した。紙には砕蜂の意外と細かくかっちりとした字で『日々実戦』とだけ書かれている。
「実は我が一族は皆このような体型であるうえ、成人してこのかた体型に変化がないため、私自身の実体験として今回の提案をすることはできぬ。そこで参考になりそうな我が副官と共に、私と他の者の比較を行ったところ、遺伝的要素を除いてもやはり刑軍としての生活が皆と根本的に違うのではないか、という結論に至った。確かに、刑軍では生活全てが訓練であり実戦であるゆえ、心身は常に緊張状態にあり、摂取した栄養はきれいにエネルギーとして利用するようになっている。刑軍の部下も、任務で必要となればいくらでも体型を変化させるが、基本的には痩身だ。あれもやはり刑軍での生活ゆえと思われる」
いったん言葉を切り、砕蜂は周囲を見渡した。そして口元に薄い笑みを浮かべる。
「そこで、だ。刑軍の訓練に特別招待してやるツアーを取りはからう。もちろん、機密に触れぬ程度だから消される心配もなく、協会の会員待遇で格安にしてやるから費用面も安心だ。これで太れない生活を実体験できるぞ」
砕蜂は堂々と言い切り、満足げに腰に手を当てて頷いた。七緒は眉を寄せて尋ねた。
「……ときどき耳にするのですが、訓練中に入院してから出てこない方がいらっしゃると」
しょうがないなとでもいうように小さく首を横に振り、砕蜂は実に爽やかな微笑みを七緒に向けた。
「ふっ……そやつらは軟弱であっただけだ。安心しろ、死ぬまではやらせぬ」
「安全性を確かにしてからお願い致します」
「では、次の方」
「はい」
七緒の声にネムが静かに手を挙げる。そしてどこからともなく計画が書かれた紙を取り出して全員に示した。紙には正確で癖のない字で『飲むだけで痩せる! これぞ究極のダイエット』と書かれている。
「私の場合、皆様と全てが根本的に異なるため、経験に基づく痩身方法というものをご提案できません。そして皆様、マユリ様に改造して頂くことはご遠慮されるとも思われますので、そちらもご提案できません。そこで、肥満と痩身のメカニズムをマユリ様と阿近さんに尋ねたところ、特別な薬品を作って下さいました。過剰な運動も食事制限も必要ありません。一日三回、定刻に飲むだけで一週間で確実に痩せられるという画期的な薬品です。研究所に一週間、お泊まり頂くことになりますが、これで確実に痩せることと思われます」
ネムは二枚目の紙を示した。そこには阿近の神経質そうな字で細かく丁寧に、薬品の成分と効能が書かれている。白衣を着た研究員らしい人の『ビフォー→アフター』という写真もあった。矢印の先にある写真の方は同一人物とは思えないほど青白く針金のように細くなっていて、その痩せ具合を眉を寄せて見比べた七緒は眼を細めた。
「……安全性は?」
ネムは淡々と言い切った。
「科学の進歩に犠牲はつきものです」
「だからあんた、人の話聞いてないでしょ! 安全じゃないとだめなんだってば!」
「会長のご提案は」
七緒がぐったりとした顔でやちるを見ると、やちるはきょとんとして七緒を見上げた。
「うーん、あたし、痩せたいとか思ったことないからよくわかんなかった。それより、卯ノ花さんに聞いてみたらどうかなあって思ったんだけど」
その言葉を聞いた途端、七緒が顔を青くした。
「七緒ちゃん?」
「い、いえ……」
言葉をぼかして七緒が目を逸らした。
「あの、今回の議題のため、アドバイザーでおられる卯ノ花隊長にもお尋ねしたんです。したんですが、もうそれはそれは美しい微笑みをされて首を傾げて、特に何にも? とだけ仰ってですね……ええそれはもう完璧な微笑みで」
「卯ノ花隊長も、普通に健康に気遣っていらっしゃると思いますよ」
勇音がにっこりと笑う。が、七緒の口元は引きつったままだ。
「そりゃそうですよね……きっとそれだけなんですよね……」
そんな七緒を見上げたまま、やちるは首を傾げる。
「じゃあ、七緒ちゃんは? 何か気にしてるの?」
「私の場合ですか」
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02月27日(水)
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