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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「ラストマイル」

平日に観ましたが、超満員。先ずは大ヒットおめでとうございます。巨大流通産業の闇に迫る社会派サスペンスで、知らなかった内幕が描かれ、面白く観ました。でもちょっと薄口かな?少し不満もあります。監督は塚原あゆ子。
流通業界の大イベントの一つ、ブラックフライデーの前夜。世界規模の最大手であるショッピングサイトから配送された商品が、爆発します。その後も、そのサイトからの荷物が立て続けに爆発。日本中が騒然となる中、新しくセンター長として赴任した舟渡エレナ(満嶋ひかり)と、チーフマネージャーの梨本孔(岡田将生)は、真相解明に奔走します。
色んなショッピングサイトがありますが、誰がどう見たって、Amazonがモデルでしょう。現場作業に従事する人は、ほとんどが派遣やアルバイト。正社員は一握り。
緻密な作業に時間との闘いの連続で、よく間違えないなと、感心しました。それと私はパソコンに疎く、事件の謎解きの意味が解らない(笑)。自分のトロさを嘆きますが、この辺は合っているのだと思っておきます。
爆破が元で、締め付けられる配送業者。下からはつつかれ、センター長のエレナには、無理難題を押し付けられる局長の八木(阿部サダヲ)。全身から中間管理職のサラリーマンの悲哀が滲みます。奔走しまくり疲弊。最後はやけになってしまう姿は、会社より現場の人たちを慮るからでしょう。好人物なのが解る。
それに対比するように、エレナは孔に「どうして配送業者にギリギリの値段で仕事させるか解る?」と問います。「会社の利益を上げるため」と答える。エレナは「違う違う。安く配送させる事で、結局はお客様が買う商品の値段が下がるのよ。二年もここで働いて、それが解らなかったのは幸せね」と答えます。
後の台詞は、エレナの強烈な皮肉であり本音だと思います。「お客様のため」。会社の利益を上げるという本音を隠して、あなたのためですよ、と言い換える事の連続なのでしょう。だから良心が痛み精神を蝕まれるのですね。自分を保てている孔を、褒めているのでしょう。
しかし、本音を隠し「お客様のため」と思い込みながら仕事をするのは、営業の常套だと思います。唯一そこから外れるのは形のある物を作っている、会社なのでは?それを体現していたのが、勤めていた家電メーカーが倒産し、長年配送の仕事をしている父親の昭(火野正平)の元で、見習いドライバーをする息子の亘(宇野祥平)だと思います。今でも元自社の商品に誇りと自信を持っている。でも誠実に作れば、値段も相応になってくるわけで、売り上げに結びつかなくなったのでしょう。
これは誰が悪いかというと、消費者である私たちだなと思う。企業に踊らされて、安さばかり追求すると、世の中は荒み、それが自分にも跳ね返ることもあるのだと、戒めになりました。
真相に前チーフマネージャーが絡むのは良いです。でも犯人をミスリードする展開は、必要だったかな?辻褄は合いますが、真犯人が唐突に出て来た印象は否めないです。もっと伏線でチラつかせる必要があったと思うし、犯人の心情は回想だけではなく、もっと掘り下げて欲しかったです。
日本支部の統括本部長五十嵐(ディーン・フジオカ)。描き方が薄い。エレナの手柄を自分のものとする姑息な様子が小物然としていてるくらいで、全然印象に残りません。もっと冷酷非道な男である描写が必要なのでは?もしくは出世のため、自分の良心と抗いながら、葛藤する場面。それにこんな大企業の統括本部場なら、すごく優秀な人の筈ですが、それも感じない。これは演出もですが、ディーンの平板な演技にもあると思います。五十嵐の役こそ、この作品の「闇」のはずなので。
魅力が薄いといえば、主役の二人もです。出ずっぱりの割には魅力が足りなかったなぁ。全体的に、主要なキャラの掘り下げが甘い気がしました。
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09月07日(土)
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