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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「 PERFECT DAYS」


遅ればせながら、明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。

今年の最初の作品です。本当は「ノセボ」が本年一発目のつもりでしたが時間が合わず、それほど期待は高くなかったこちらが幕開けに。これが何と素晴らしい!初老男性のルーティンの毎日が、津々と心に滋養を注いでくれました。監督はヴィム・ベンダース。役所広司のカンヌ映画祭主演男優賞受賞作。彼の素晴らしい演技も見どころです。

公共トイレの清掃員の平山(役所広司)。下町の古いアパートに住む初老男性です。チャラくていい加減なれど、愛嬌のあるタカシ(柄本時生)とコンビを組んでいます。ある日、毎日規則正しく生活をしている平山の元に、妹(麻生祐未)の娘である姪のニコ(中野有紗)が、母親と喧嘩して家出してきます。

清掃員を主役にするのはいいけど、何でトイレ?と観る前は思っていましたが、観て納得。東京の公共トイレは、清潔なだけではなく、その場に応じて遊び心があり、とても楽しい!外国人に日本のトイレの評判が高いとよく耳にしますが、それをとても実感出来ます。

観る前は、平山は孤高で少々偏屈な人なのかと想像していましたが、予想×。タカシは変人とも称しますが、それも違う。朝起きると雑草に丁寧にキリを吹きかけ、口髭の手入れから始まります。夜明けに家を出る時は、必ず微笑んで空を見上げ、朝食代りの缶コーヒーを購入。それも苦いブラックではなく、甘いカフェオレなのもご愛嬌。ルー・リードやパティ・スミス、その他のカセットデープを日代りにチョイスしながら、仕事場までドライブ。丁寧で生真面目な仕事ぶりは、彼の人柄と、仕事への遣り甲斐と誇りをも感じます。

雑草を育てるのは、凄く共感しました。私は分譲マンションの管理員で、マンション内の一部に砂利を引いている個所があって、そこに種が飛んできて、雑草が生えます。それが見事な花を咲かせたり、立派な枝ぶりになる事があるのね。この仕事をする前は、雑草は雑草であって、こんなに綺麗に花を咲かせるなんて、思ってもいませんでした。人目につかない場所なのを良い事に、草むしりの時は、実は選別しているのです、私。館内を巡回中の時、おぉ、いいねいいねと、育っているのを見るのは、私の小さな楽しみです。平山はプラス、そこに自分を重ねているように思うのです。

仕事が終われば馴染みの銭湯へ。駅構内の居酒屋で、大将の威勢の良い「お帰り!」の掛け声と共に、チューハイが出てくる。会話こそないけれど、常連さんたちへ、愛想良く笑顔を向ける平山。お昼のサンドイッチを食す境内でも、いつも隣合わすOLさんにも、会話はないけど笑顔を向けて挨拶。

テレビもパソコンも無い家では、夜は読書で過ごす。休日はコインランドリーで洗濯。写真屋で趣味のカメラのフィルムを現像して貰い、新しいフィルムと交換。古本屋で文庫本を購入し、その後、これも馴染みのスナックへ。平山とママ(石川さゆり)が、お互い憎からず思っているのも解ります。もう最高じゃないですか?何の変哲もない日々から、心豊かに充実した毎日が感じ取れるのです。

何がびっくりって、この初老のおじさんの、平凡なルーティーンの毎日が、観ていて実に興味深く楽しくて、全く飽きないのです。まず一口にルーティーンと言っても、少しずつ変化やアクシデントあり、全く同じ日はなかった事。私自身、刺激や変化は好まず、出来れば同じ日々を繰り返す方が好きです。(退屈でも全くOK)そう思うと毎日過ごす平凡な日々が、何と愛しく尊いのだろうかと、感じ入りました。


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01月08日(月)
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