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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」

祝!アカデミー賞最多部門受賞!観たのは先週の土曜日です。賛否両論で、私は多分ダメだろうと予想していました。でもアジア最大の俳優(女優じゃないよ、俳優!)だと個人的に思っているミシェル・ヨーが主演女優賞にノミネートされているので(ジェイミー・リー・カーチスも好きだ)、敬意を表して観にゃけりゃならん。まぁ渋々ですよ。それがあなた、ラスト近くはまさかの大号泣(笑)。個人的には「イニシェリン島の精霊」の方が好きですが、こちらも手放しで絶賛です。監督はオスカー受賞のダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート。
中国からアメリカに移住し、夫のウェイモンド(キー・フォイ・クァン)と共に、しがないコインランドリーを経営しているエブリン(ミシェル・ヨー)。善良だけが取り柄の頼りない夫、反抗期の娘ジョイ(ステファニー・スー)に、頑固な老実父=ゴンゴン(ジェームズ・フォン)まで抱え、エブリン自身も所帯やつれの冴えない日々です。今日は税務署の監査員ディアドラ(ジェイミー・リー・カーチス)から、本日中の書類を精査して提出しろと言われ、頭を抱えます。しかし突然ウェイモンドが何かに取り付かれたように、「巨大な悪を退治して、地球を救うのは君だ!」と、語りかけます。それ以降何度も意識が飛び、別世界で様々な姿の自分に出会うのですが、巨大な悪の正体は、何とジョブ・トゥパキと名乗る、ジョイでした!
ねっ、バカバカしいでしょ?(笑)。でも冒頭から10分過ぎたくらいで、テンポの波長が合うのを確認。「これはイケるかも?」の予感。ウェイモンドがウェストポーチをヌンチャクのように巧みに操る姿にオォ!と目を見張り、ガハガハ笑い(そして懐かしい)、これ以降はノンストップでハマりまくりました。クァンってね、眼鏡を外すと、横顔なんてジャッキー・チェンにそっくりなんです。だから、存在自体が香港カンフー映画のオマージュっぽいのね。
マルチバースの世界なので、次から次に矢継ぎ早にエブリンは変身。カンフーマスターだったり、京劇のプリマだったり、凄腕のシェフ、そしてゴージャスな銀幕の大女優。そのそれぞれにバカバカしいけど、ハイテンションの見せ場がたっぷりです。ちょっとお下劣な場面も多々ありましたが、そこはやっぱり香港映画のコメディ、それも一番隆盛だった頃を思い出し、私は楽しかったです。あっ、ちょっと「マトリックス」も入ってたような。
エブリンの七変化を観て、この役はヨーを充て書きしたのかと思った程。マレーシア人のヨーは、香港映画から出発し、ハリウッドにも進出。アクションが出来て、カンフーが出来て、武侠映画の殺陣も出来る。文芸作品、普通のドラマ、ハリウッド大作と、何でも出来ちゃう人なんです。そうだよ、ボンドガールもやったんだよ。あんなに美人なのに、美貌に頼らず常に第一線で活躍し続けている、本当にリスペクトすべき人です。どんな姿のエブリンもチャーミングなのは、ヨーが演じてこそだったと思います。
ハイテンションで大爆発し続けるコメディに、時々覗く夫婦、親子の葛藤が、終盤近くで大爆発。あらゆる「自分」を体験した後のエブリンが、最後に選んだのは、どの自分か?経験したからこそ、見えなかったものが見えて、別の視点が開かれたのよね。これが開眼っていう事かな?
マルチバースで変身中のエブリンに、父は巨悪のジョブ・トゥパキ=ジョイを殺せと言う。多分、古来からの東洋的思考では、親の言う事は絶対で、子供より親を選べと教えられているはず。でもエブリンは、例え巨悪に姿が変わっても、娘は殺さない。親より自分の子供を取ります。ここは当たり前に観ちゃ、いけないところだと思います。生まれた時、「なんだ、女か」と父親を落胆させたエブリン。この落胆は、きっとずっと彼女の人生で、尾を引いた事でしょう。その事を乗り越えた瞬間だと思いました。
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03月14日(火)
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