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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「ハケンアニメ!」
わーん、書くの遅れちゃった!親愛なる映画友達の皆さん、こぞって絶賛の作品です。アニメ作品のお仕事映画としても秀逸な、拘りの強いオタクさんたちの、熱い血潮がたぎる作品でした。監督は吉野耕平。
テレビの連続アニメ「サウンドバック 奏の石」での監督デビューが決まった斎藤瞳(吉岡里帆)。瞳が土曜夕方アニメの覇権(ハケン)を争うことになるのが、瞳も憧れる天才・王子千晴(中村倫也)監督の「運命戦線リデルライト」。
瞳を抜擢したのは敏腕プロデューサーの行城(柄本佑)。一方王子のプロデューサー有科(尾野真千子)は、久々の王子の復帰作に意欲を燃やします。どちらが今期の「ハケン」を握るのか?
アニメは気が向いたら観る程度で、それ程造詣は深くありません。なので序盤の制作に携わる人々の多さと丁寧な手間のかけ方にびっくり。実写もなのですが、まず制作に携わる人々に、深く敬意が湧きました。
瞳は国立大学を出て、公務員となり、この仕事についた変わり種。容姿も愛らしく、珍しい女性監督であることも注目される一因で、使えるものは何でも使おう精神の行城の宣伝方法に疑問を持ちます。瞳の作品に対する一途な拘りは、私は好意的に観ていたので、この辺では彼女の肩を持っていました。しかし行城はただの冷徹な男ではなかったんだな。
一方本当は引っ込み思案で、ただひたすら絵コンテを描きアニメの構想を練りたい王子ですが、自分の見栄えの良い見てくれが話題になる事を知っている。キザで尖った発言を繰り返しながら、本音は才能の枯渇に怯える彼。王子の作品の大ファンで、心から王子を尊敬する有科が、そんな王子を、陰に日向に支える姿は、とても心に響きました。
視聴率に苦戦する「サバク」に、タイアップ商品や起用したアイドル声優に露出で、認知を広めようとする行城に、嫌悪感を露にする瞳。ですが、アニメ作品は監督一人の物ではなく、携わった人々皆の物である事。そしてその責任を任せられる器も、要求される事です。行城の元で悩み凹みながら成長する瞳の姿も、清々しい。
瞳の回想で、幼い頃の様子が出ます。借金取りに怯える小学生の瞳。その境遇が「魔法なんてない」とのシニカルな思考を育て、国立大学を卒業させた原動力だったと思います。しかし大人になって王子の作品に出合い、幼い頃の自分がこの作品に出合ったら、もっと人生に夢を持って生きられたのではないか?それはワクワクする日常ではないか?今夢のない生活を送っている子供たちに、その熱い思いを伝えたい、と言うのが、瞳の原動力です。もうここで涙涙の私。
アニメではありませんが、大昔、美空ひばりの追悼番組で、あるファンの手紙が読まれました。集団就職で都会に出た少女は、ひばりちゃんの歌を聴くだけが楽しみだった。しかし毎日の辛さに、死のうと思っていた時、ひばりちゃんの曲が流れ、思い留まった。それからの日々は、ひばりちゃんの歌を支えに頑張り、その後結婚。今は孫の世話をする毎日で、私の今の幸せは、自殺を思い止まらせた、ひばりちゃんのお陰と締めくくられていました。
私はこの時ほど、美空ひばりに畏敬の念を抱いた事はありません。歌声一つで、一人の人間の人生を好転させるなんて、何て凄い人なのか。この人のような人は、美空ひばりのファンには、たくさんいるのでしょう。大衆向けの芸能やカルチャーには、人の人生を支えたり、感動させる力があるんですよ。この作品にも、その力を感じました。そう言えば私も「少林サッカー」を観た当時、今で言うパワハラな会社で働いていて、絶対転職するぞ!と決意しましたっけ。その後に見つけたのが、長く働き、私をたくさん成長させてくれた、思い出多き医療事務でした。
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06月13日(月)
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