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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「岬の兄妹」(Amazonプライム)

いやー、面白かった。と言うか、すごく理解出来るお話でした。食い詰めた障碍者の兄が、自閉症の妹に売春させて糊口を凌ぐお話なんて、きっと湿っぽくて絶望的なんだろうなぁと予想しましたが、途中コメディなのかと思う場面も出てきて、結構明るい気持ちで鑑賞を終えました。悲劇と思いきや、悲喜劇でした。個人的に傑作とまでは行かないけど、十分に秀作だと思います。監督は片山慎慎三。
造船所をリストラされた良夫(松浦裕也)。自閉症の妹真理子(和田光沙)を抱え、途方に暮れている時、いつものように家から飛び出した真理子が、行きずりの男と寝て、金銭を得た事を知ります。思い悩んだ末、真理子に売春させて、生計を立てようと企てる良夫。そこには、様々な事が待ち受けていました。
うん、確かに主役の二人、お芝居上手い!特に和田光沙は、障碍者を演じると変に臭味のある演技に流れる役者が多い中、淡々とスルスル自閉症の特徴を掴んで演技していて、感嘆しました。
重度知的障害の女性と、精神疾患を持った男性が組んで売春をして、生計を立てている話は以前から知っていたので、この設定には特段衝撃はありません(精神科時代に目が飛び出るお話を色々知ってしまったので、感覚が麻痺している)。
良夫の幼馴染の警官が、何故生活保護を受給しろと教えないのか?と言う感想をちらっと以前、目にしました。生保は申請と認可が複雑で、そんなにすぐには下りないです。待機期間もある。私は日本で一番生保の人が多い地区の精神科のクリニックに勤めていましたが、その時びっくりしたのは、大阪出身の人は、一握りもいなかった事です。北は北海道から南は沖縄まで、N区に流れてくる。中にはN区ならすぐ生保が下りるらしいと、生保目的で来阪する人もいたくらい。
何故そんな事が起きるかと言うと、生保の人を迎える準備が整った地区は、他にはないから。普通の地区とでは、スピードが違うのだと、当時職員に教えて貰いました。
幼馴染が、妹に売春させている良夫を咎めると、「お前みたいなのを、偽善者って言うんだよ!」と言い返します。あぁこの幼馴染は、観客なんだなと思いました。本当に二人を思うなら、首を引っ張ってでも役所に行けばいい。高みから通常の倫理観を吐いてるだけ。そして彼らが煩わしいのね。具体的に生保を口に出すと、深く関わらなきゃいけないのが、嫌なのでしょう。
演じる北山雅康が、中々嫌味な冷淡さを感じさせる演技で、ここでも幼馴染=観客がグサグサ胸に刺さって、良かったです。売春より生活保護申請の方が敷居が高い人も、共感はしませんが、理解出来ました。
私が気になったのは、リストラなんだから、雇用保険が直ぐ支給じゃないかな?これも社保はついていなかったかも知れません。幼い時の二人が出てきますが、亡くなった母親から、真理子を頼むと言う言葉があり、それが良夫の呪縛になっているのでしょう。彼的には、生保を受給しては、草葉の陰の親に会わす顔がなかったのでしょうね。
立ちんぼでは怖いお兄さんたちに、強烈なお仕置きを受けたので(みかじめ料を知らなかった)デリヘルを思いつく兄。お仕事中の真理子なんですが、これがなかなか優秀なんだな(笑)。元々好色なのか?と思いつつ、観ていたら、「仕事?仕事?」を連呼する真理子。仕事が嬉しいのかー。お金稼ぐのは初めてでしょう。何だか辛い。でも妻を亡くした孤独な老人を相手にする彼女を見て、菩薩のような気がしたのは、私だけかな?年金暮らしのお爺ちゃんに、高い料金は難しく、一万円って、人助けのような気がしたなぁ。
中学生の悪ガキどもに、お金を強奪されそうになった良夫は、自分の排泄物を相手になすりつけ、撃退します。良夫も褒められた事をしていませんが、大人を舐めた小童は、もっとしてやりゃあいいんだよ。このエピソードは虐めが導入で、最後は苛めっ子を逆襲、笑いで締めくくって、面白かったです。
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05月25日(火)
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