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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「ステージ・マザー」

先週土曜日は何を観ようかと迷っていたところ、親愛なる映画友達の方に勧めて頂き、観てきました。そうそう、こう言う作品が観たかったの、とっても良かった、素晴らしい!母と息子「たち」の物語を軸に、良妻賢母と言う呪縛からの解放も描いていて、息子三人を育てた私から観たら、1を描けば10解る世界観で、津々心に響きまくった93分です。監督はトム・フィッツジェラルド。
聖歌隊の指導をしている主婦のメイベリン(ジャッキー・ウィーバー)。サンフランシスコに住む一人息子リッキーの訃報が届き悲嘆に暮れます。ドラッグクィーンの息子を否定する夫は、行くなと止めますが、メイベリンは強引にサンフランシスコに向かいます。そこで息子がバーを経営していた事、夫のネイサン(エイドリアン・グレニアー)は事実婚なので、店の経営権はメイベリンに移った事など知ります。
華やかで毒々しい葬儀に敬虔なキリスト教徒であるメイベリンは絶句。まぁ当然ですよね。でも葬儀の時、神父的な役割をしていた年長のドラッククィーンが、リッキーの好きな物として、メイベリンを指さし「マスカラ!」と叫んだのは、やっぱり故人の気持ちを尊重しているのです。「メイベリン」は化粧品メーカーで、マスカラが一番有名なんです。カジュアルなブランドで、日本で言えば、キャンメイクみたいな感じかな?「名前がメイベリンだなんて。せめてロレアルなら良かったのに」と言うセリフにも笑いましたが、男性は意味が解ったかな?
サンフランシスコは多分同性婚可能だったと思いますが、生前リッキーはメイベリンの許可があってからと、ネイサンとは結婚には至らず。同性の事実婚の法律上の問題点も挿入しながら、例え国が同性婚を認めても、親に認めて貰いたい子供の願いも描き、この辺は胸が痛い。私は息子三人なんで、一人くらい申し入れがあっても、さほど困惑しないと思いますが(夫は発狂すると思う)、リッキーは一人息子、結婚を認めなかったメイベリンの気持ちも解る。そして、それを一番今後悔しているのは、彼女だと思うのです。
店は閑古鳥が鳴き、閉店寸前。メイベリンに対して塩対応のネイサンや年長ドラッグクィーンに対して、若手のジョアンナ、エリック、チェリーの三人娘は、好意的な態度。そこにはLGBTに対しての世間の認識の緩和が、年齢層に現れているのかと感じます。それと同時に、若手三人組は、メイベリンに対して、素直に「母」を感じ取ったのだと思います。
シングルマザーのシエナ(リューシー・リュー)。リッキーとは親友で、彼が一生に育てようと言ったので、この子を産んだと言います。赤ちゃんの名前はリッキー。私事ですが、昨年9月に初孫が生まれました。親になったら生きている限り親ですが、子育てはもうだいぶ前に終わったので、母性と言う本能は減少しています。それがあなた、孫が生まれたら一気にまた母性の器が満たされていくのですよ。とても不思議な感覚です。リッキーが育てようと言ったなら、赤ちゃんリッキーは、メイベリンに取って、孫も同然。メイベリンが店やリッキーが紡いでくれた人たちに向ける母性愛としか言いようのない愛情を引き出したのは、私はシエナの赤ちゃんだと思います。
三人娘に口パクではなく歌を教え、下品だったショーは官能性たっぷりの
ゴージャスなショーへ。店の内装を変え、「娘たち」の私生活の難儀にもズケズケ乗り込み、バッタバッタとなぎ倒す。猪突猛進のその姿が眩く見えるのは、メイベリンが「お母さん」だからなのですね。「娘たち」は今まで恵まれなかった母の愛情を貰い、メイベリンはリッキーに与えらえなかった愛情を、彼女たちに与える。幸せな関係のみ描いているのは、作り手が「お母さん」と言う存在に、敬意を表してくれているのだと思いました。
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03月10日(水)
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