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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」

フロリダの安モーテルを舞台に、最低層の子供たちを描きながら、子供が子供である時代、何が一番大事なのかを教えてくれる作品。今の日本の実情と照らし合わせて考える事も充分に出来ます。私は子供が生き生きする作品が大好きですが、それを差し引いても傑作だと思います。ラストは暫し号泣でした。監督はショーン・ベイカー。
フロリダのディズニーワールドの横にある、安モーテル。かつてはディズニーワールドに来る人たちを当て込んでいましたが、老朽化し、現在は行き場のない人々の長期滞在所に。ここに流れついたのが、若いシングルマザーのヘイリー(ブリア・ヴィネイト)と、6歳の娘ムーニー(ブルックリン・キンバリー・プリンス)。同じくここに住み着いているスクーティーやジャンシーと共に、周囲の大人や管理人のボビー(ウィレム・デフォー)に迷惑をかけ通しながら、毎日を楽しく生きているムーニー。しかし、ある事件をきっかけに、それなりに平穏だったムーニーの生活は、追い詰められていきます。
ムーニーたちが、とんでもない悪ガキ(笑)。その無邪気さは天真爛漫を通り越して傍若無人です。近所にこんな子供がいたら、私だって鬼ババァになります。無駄に子供たちが超可愛いのが、始末に悪い。それに拍車をかけるのが、母親のヘイリー。「また何かしたの?」と言うだけで、全く躾をしません。ザンバラの髪をまとめるでもなく、タンクトップに短パン姿からは、あちこち刺青が覗く。家電を買って、惣菜を作る人もいる中、食事は教会の配給と、ダイナー勤めのスクーティーの母親アシュリーが分けてくれるパンケーキ等。部屋はゴミ屋敷寸前。そのくせ、マリファナだけは、欠かしません。自堕落なこと、この上ない。
誰が見ても母親失格のヘイリー。現在無職ですが、元はストリッパー。無料の交通チケットを申請する時(でも却下)「客に手コキしろって言われたの。嫌だと言ったら、ダンスさせてくれなくなった」のが原因。今はチンケな詐欺で小遣いを稼ぐ有様。どこから見ても、ど底辺の母親失格の女性です。観ながら、ため息ばっかり。スクリーンの中へ入って行き、母娘共々、躾したくなりました。それが同じ風景を繰り返し見るうちに、私はこの母と娘に、自分の子育て時代を思い出し、共感して行くのです。
ムーニーは飢えた事がありません。衣食住は守られており、夜はベッドで母と共に眠る。部屋は汚いけれど、ヘイリーは洗濯は欠かさない。何より毎日楽しく「子供らしく」過ごしている。子供が子供でいる時代を、充分エンジョイさせてやれる事は、実は難しい。「子供らしくない子供」。それは親が作っている。
よく虐待する親を子供が庇う時、あんな親でも子供は大切なのだと言われますが、それとは違うヘイリー。ムーニーとヘイリーは心からお互いを愛し、強い絆がある。そうです、ヘイリーはネグレクトでも虐待でもない。ただ真っ当な暮らし方を知らないだけです。彼女自身が、そういう育ち方をしているのでしょう。彼女たちだけではなく、ここの家もない底辺の人々は、彼らなりに一生懸命生きている。それをわかっているから、ボビーは一見疎ましさを装いながら、付かず離れず、慈しみながら見守っているのでしょう。きっと彼も訳ありの人なのです。
ある事故から、母親のアシュリーからムーニーと遊ぶのを禁止されるスクーティー。「こんな事が知れたら、児童局に連絡されるのよ!」。モーテル暮らしを非行の原因と取られるのを、何より母として恐れているアシュリー。彼女も心から息子を愛しているのですね。ヘイリーに伝えても、埒が明かない事は明白で、二人の暮らしを守りたい彼女は、自分もヘイリーと絶交します。
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05月20日(日)
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