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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「永い言い訳」

作家性が好きじゃない、監督は腹黒だ、とかなんとか言いながら、新作が公開されれば必ず観てしまう西川美和監督。それだけ卓抜した技量があるのは、誰もが認める人です。しかし今作は予告編からちと違い、嫌らしさがほとんどない。設定こそ特異ですが、ユーモアと暖か味のある、実にチャーミングな作品に仕上がっています。どうした?監督(笑)。ちょっと気になる箇所はありますが、私は好きな作品です。
作家の津村啓こと衣川幸夫(本木雅弘)。美容院を経営する妻夏子(深津絵里)とは結婚20年で、子供はいません。夏子は高校時代からの親友大宮ゆき(堀内敬子)と旅行に出かけるも、バスが事故に遭い、夏子は死亡。しかしその時幸夫は、編集者の知尋(黒木華)と浮気の真っ最中。葬儀の間も、一度も泣けなかった幸夫ですが、バス会社の遺族を集めた説明会で、ゆきの夫陽一(竹原ピストル)と出会います。長距離トラックの運転手である洋一は、ゆきがいなくなり、子育てに困っており、幸夫は自分が二人の子供、小6の真平(藤田健心)と5歳の灯(白鳥玉季)の子守を買ってでます。
幸夫は往年のプロ野球選手・鉄人衣笠と同姓同名(幸夫は幸男だけど)。この名前で生きて行くのは辛かったと言います。これはわかる。何で衣笠みたいな、渋い人を選んだのかと思いましたが、監督は広島出身なのを思い出す。この辺からして、今回の監督は「いい人」です。
幸夫は今年お騒がせの、ザ・ゲス男。作家と言っても、現在はヒット作には恵まれず、タレント作家としてテレビの露出の方が多し。マネージャ―(池松壮亮)もいます。才色兼備の妻・夏子は、努力家でもあり、現在は美容師として一流に。そんな妻にプライドを振りかざし、しょうもない自意識にぐるぐる巻きになる夫の幸夫。まぁ〜ちっちゃい男(笑)。憂さ晴らしが不倫ですか?妻の葬儀で、悲しむより自分の髪形を気にする様子には、怒りより先に、バカなの?と思っちゃう。もうね、「さざなみ」の夫にお怒りの奥様方、あの夫の比じゃございません事よ。
しかしこれがモックンが演じると、ユーモラスかつ、子供が駄々をこねているように感じます。全然腹が立たない。私は「少年のような男性」と言うのが苦手で、自分はそれだと思っている人は、たいがいが、そんな清々しいもんじゃありませんから。こちら幸夫は少年にもなっていない、タダの子供みたいな人。子供って何やらかすか、わからないから、観ていて面白いでしょ?幸夫はそれです。
自分が子供なので、子供たちともすぐ打ち解ける。最初は少しの妻への謝罪の意味と、作家的好奇心から世話していた幸夫ですが、途中から子守にはまりまくる。それもとても母性的な意味合いで。観ていて、あぁこの人は家庭に居場所がなかったんだなと思います。妻の存在が大きすぎて、夫として座り心地が悪かったんですね。四人での海水浴の風景など、まるで仲睦まじいゲイのカップルが子育てしているかのような、「家族」としての違和感がないです。
しかし本当は楽しいのに、余計なひと言を陽一に言った為、素直な陽一は真に受ける。結果善意の侵入者(山田真保)の登場。陽一や子供たちは、そんな事は思っていないのに、自分はもう必要ない存在だと、拗ねて悪態付いて、心にもない暴言失言を繰り出す幸夫。ホント、子供だわ。
私が観ていて唸ったのは、すぐに登場しなくなる二人の主婦が、デーンと各々の家庭に、死後も尚すごい存在感なのを描けている事です。幸夫の整っていた家は、乱雑なゴミ屋敷手前。そして弾みで観てしまった、最後に残した妻の一撃に衝撃を受ける。その後、激怒(笑)。まぁ勝手なもんです。自分は何をしても、妻は自分を愛していると信じていたんですね。
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10月17日(月)
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