ID:10442
ケイケイの映画日記
by ケイケイ
[927598hit]

■「フレンチアルプスで起きたこと」


超〜面白かった!結婚生活10年以上の方々にとっては、シニカルで恐ろしくて笑えて、そして身につまされて泣けるコメディです。個人的には、我が夫を大層見直した事もあり、大変有意義な鑑賞でした。監督はリューベン・オストルンド。今回ちょっとネタバレ気味です。

フレンチアルプスの高級リゾート地に、家族でやってきたエリートビジネスマンのトマス(ヨハネス・バー・クンケ)一家。美しい妻エバ(リーサ・ローヴェン・コングスリ)と、可愛い小学生のクララとハリーの子供たち。絵に描いたような幸せな家族は、五日間のバカンスを楽しむはずでした。しかし、二日目、テラスで昼食を取っていた家族は、ホテルが用意したアトラクションの人工雪崩が、予想以上にテラスに迫ってきて、宿泊者たちはパニックに。一面真っ白になる中、あろうことか、トマスは妻子を置いて、一人逃げてしまいました。幸いケガ人も出ず終息した雪崩でしたが、何食わぬ顔で戻ってきたトマスに、妻子は冷たい視線を投げかけます。

観る前は、女性の解放が世界的に叫ばれる中、男性だけが屈強な男らしさを求められるのは、些か可哀想だと思っていましたが、このケースは冷たくされて当然だわね。怖がる息子のハリーが、「パパー!」と助けを求めて絶叫しているのに、父親が逃げ出すか?それも真横に座っているのに。

エバもそこを怒っているのですね。ホテルで知り合った既婚女性と、母親としての女性の在り方で激論。エバは古風な子供第一、家庭第一で生きてきた女性であるとわかります。しばし共感する私。でも普段なら、あなたはあなた、私は私と、相手の意見も尊重出来たでしょうが、夫の事もあり相手と口げんかになる。ほぼ八つ当たり。自分の今までの献身は、一体何だったんだろ?と、胸に渦巻いているんですね。よーく、わかるわ、わかるよエバさん。

しかし子供たちが楽しみにしているバカンスです。子供を思い、小さなジャブは繰り出すものの、基本は平静。てか、嵐の前の静けさ。本心は夫の謝罪が欲しいのです。しかし!この夫それをいいことに、妻はちょっと不機嫌なだけさ、すぐ機嫌直るよと、逃げ出した事は「なかった」事に持ち込みたい模様。しかし謝罪があるまで、やっぱり許せない妻。小出しにネチネチ蒸し返し、夫の出方を待つ妻。噴火寸前。対する夫は常に背中に冷たいものは走っている模様。

もうね、この展開がわかり過ぎるくらいわかる。女ってこういう展開に持ち込むもんですよ。相手が悪いんだもん、勝算120%。謝ればいいのに、ぐだぐた屁理屈ばっかりこねるトマスに、ええい!早く謝らんか!と思う私。謝るという行為には、誠意が必要で、きっとトマスには「俺が時間やりくりして、せっかく連れてきてやったのに、何だよ、これくらい!」という、尊大なすり替えの心があったんじゃないかな?だから謝りたくない。それとこれとは別です(きっぱり)。この辺の展開は巧みで、とっても面白い。

とうとう、ホテルで知り合った中年と小娘のカップルも巻き込んで、有無を言わせぬ証拠を突きつけられるトマス。このカップルは、最初セックスの事だけ考えているバカップルかと思いきや、中々に知性的で好人物たちでした。いや人は見かけによらないわね。巻き込まれて自分たちに置き換えてしまい、多分その夜はセックスも出来なくて(笑)、可哀想でしたが、この二人の会話も面白い。特に若いのにズバズバ真実を突く小娘ちゃんにも共感します。


[5]続きを読む

07月22日(水)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る