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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「魔法少女まどか★マギカ」(前後編)

新作の「叛逆編」が明日から公開と言う事で、前作に当たるこちらをリバイバル公開中で、見逃していたので駆けつけました。画像はちょっとましですが、どこから見ても可愛い萌えキャラ集団の、オタクさん御用達のアニメみたいでしょ?ところがこの可愛い女子中学生たちを使い、彼女たちに解りやすい背景を背負わせ、平易な言葉で人生哲学を語らせるのです。冒頭の学園モノの愛らしさから、お話はどんどんダークサイドへと落ちて行き、愛と正義、希望と絶望、怨みと祈り、喜びと哀しみ。人は何のために生きるのか?魂とは?その器とは?人の持つ全ての感情を刺激され、考えさせられた四時間でした。監督は宮本幸裕。総監督は新房昭之。掛け値なしの傑作です。
鹿目(かなめ)まどか。両親と弟と暮らす平凡な中学生女子。同級生のさやか、仁美と仲良しです。ある日ほむらと言う美少女が転校生として編入。「家族が大事で、今の生活に満足しているのなら、それを大切にしなさい」と謎めいた忠告をします。しかしさやかと一緒の時、まどかはある不思議な出来事に巻き込まれ、そこで上級生のマミと、キュウベぇと言う人間の言葉が話せる動物と出会います。マミは世の中の不吉な事や天変地異などを引き起こすのは、魔女の仕業で、自分はその魔女を倒すのが役目の魔法少女だと言います。キュウベぇは契約を結んだ少女を、魔法少女にする力を持っています。契約とは、一つだけどんな願い事でも叶うが、永遠に魔女と戦わなくてはいけないと言う事。まどかとさやかは、キュウベぇから魔法少女にならないか?とスカウトされますが・・・。
元は深夜に帯で放送していたアニメを、劇場用に再編集した作品です。びっくりしたのは、画がすごく充実している事。魔界の様子は思いもよらぬ表現で、邪悪な不思議の国のアリスと言う感じ。シュールでポップで悪趣味。でも蠱惑的でもあり。気恥ずかしいような可愛いキャラと、とてもマッチしています。
魔女の怨念で作り出す世界という設定ですが、人生には疲れや哀しみを感じる時、「魔が差す」「魔が入る」と言う状態がしばしば起こります。それを指しているのだと思いました。自殺しようとする人々が「さぁ、一緒に。向こうの側では楽になれる」と、まどかに微笑む様子は、魔界の蠱惑性と合致しています。
そんな魔女と命懸けで戦っても、魔法少女たちの活動は人知れずで、友達もなく自由な少女らしい生活とは、無縁です。よく考えてからと二人に諭すマミは、その辛さを知っています。同時にこの思いを分かち合える友を欲し、心では二人に魔法少女になって欲しいと願う様子がいじらしい。願い事=奇跡との等価交換とは言え、あまりに過酷だからです。
特筆すべきは、彼女たちが魔法少女になったきっかけは、全て自分以外の人のためなのです。親だったり友人だったり、恋しい人だったり。しかし純粋なその自己犠牲の思いは、皆彼女たちを裏切り踏みにじって行くのです。堪らない思いで観る私。何故ならそれは、予想できた事だから。当初は愛と正義のためであると、胸を張っていた彼女たちは、段々と疲弊していきます。
人生経験の浅い、自分の人生さえおぼつかぬ少女が、他人の為に自分を犠牲にしたら?当初は歓喜だけだったのが、恋心敗れるさやか。でも中学生の彼女たちに、先に何が待つのか、想像できなくて当たり前。あなたの腕を治したのは私よ!と、恋しい人には言えない辛さ。そして親友との三角関係。敗れた恋心は、やがて裏切られたと解釈するでしょう。私のように年が行った者は、希望が叶わなかった時、受け入れたり諦めたりして、その状態で待つ事を知っています。そして時間が癒してくれる。それは時が解決すると言う事。しかし彼女たちは、その年数を生きていない。だから希が絶たれたら、絶望しかない。そして絶望の向こうには怨みと言う情念が待っている。
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10月25日(金)
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