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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「ずっとあなたを愛してる」


昨秋にこの作品のことを知り、ホントにホントに楽しみにしていました。初めの方で既に心が揺さぶられ始め、途中から涙が溢れて止まりません。帰りの電車でも思い出しては涙が出て、とっても恥ずかしくてね。私がお金も時間も作ってたくさん映画を観るのは、人の目に触れにくい、しかし作り手が強く気高い信念を持つ、この作品の様な映画に感動できる心を養うためなんだと思います、きっと。監督・脚本は、フランスの人気作家フィリップ・クローデル。厳しく繊細な、しかしとても温かい作品です。

6歳の子供を殺した罪で、15年刑務所に服役していたジュリエット(クリスティン・スコット・トーマス)。出所の日、迎えに来てくれたのは、年の離れた妹のレア(エルザ・ジルベルスタイン)。レアは渋る夫リュックを説得し、ジュリエットを我が家に迎え入れることにしたのです。ベトナムからの上の養女であるプチ・リスが最初にジュリエットに興味を示し、夫の父が暖かい包容力でジュリエットを受け入れました。徐々に頑なな心を開いていくジュリエットでしたが・・・。

冒頭、化粧気のないジュリエットは、50歳前後の「老婆」に見えます。何も期待せず、さりとて絶望もせず、ただ「生きながらえている」ように見えます。レアの家族に迎えられても、それは同じ。居心地の悪さに遠慮しつつも、さりとて馴染もうとするわけでもない。ひたすら虚無です。刑に服した理由を思えば、さもありなん。

レアの家族は夫はドイツとのハーフ、レアも英仏のハーフ。二人の養女はベトナムからです。人種も多様、血も繋がらないのに、この家庭は本当に普通の家庭です。子供たちは屈託なくはしゃぎまわり、祖父が孫娘にちょっかいを出せば、孫はいたずらで返し、両親はいらついて子供にあたるも、常に抱き締めキスをすることは忘れません。開放的で愛に溢れた家です。その中で、血の通い合う姉妹だけがぎこちない。

少しずつ会話していくうちに、姉の罪は妹のレアにとっても深い心の傷となったのがわかります。両親から姉はいなかったと思えと言われ続けてきたレア。姉に会うのは怖かったでしょう。しかし優しく聡明で美しかった姉に可愛がってもらった記憶は、怖さよりもずっと価値のあるものだったのです。

二人の姪、取り分け利発でおしゃまなプチ・リスに、レアの幼い頃を重ねるジュリエット。プチ・リスを寝かしつけた後、ぎこちなくプチ・リスにキスします。微笑みながら遠くから見守るレア。レアはしっかり姉と向き合うことで、心の傷を克服しようとしているのです。そう出来たのは、姉を信じていたからです。出所後は一人で、誰にも知られず生きて行こうと思っていたジュリエットもまた、心からレアを愛した記憶が、妹の申し出を受け入れた理由です。

ジュリエットに関心を示すレアの同僚のミシェル。彼はかつて、定期的に刑務所に講義に入った話をします。「人生の観方が変わった出来事だった。自分とはかけ離れていると思っていた彼らだが、本当は彼らと自分は、紙一重なのだと感じた」と語ります。監督のクローデルには、ミシェルと同じ体験があり、私はこの言葉は、監督が観客に向けた言葉だと思うのです。刑務所に限らず、物事には必ず光と影があり、片方だけ観てはいけないと。ジュリエットがある「告白」をする場面での友人たちの反応が、それを象徴しているように思えました。人を表面だけで判断するなかれ。

硬い甲羅に覆われていたようだったジュリエットが、本当に少しずつ、家族とも外の人々とも打ち解け始める様子が、とても自然に描かれます。その様子は雲に覆われていた冬の空が、段々春めいた空に変わって行く時のようです。重苦しい空気が、段々澄んでいく展開の中、ジュリエットの子殺しの理由が判明します。


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02月04日(木)
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