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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「ジュリー&ジュリア」
とってもとっても素敵な作品。大好きです。ポスターのメリル・ストリープの屈託のない弾ける笑顔と、今一番お気に入りのエイミー・アダムスが共演のお料理の映画、とだけ頭に入れて観ましたが、ブログを書く事で成長していくヒロイン・ジュリーに自分を重ねて、何度も涙ぐんでしまいました。監督はいつも温かいノーラ・エフロン。

1949年。40過ぎのアメリカ人ジュリア・チャイルド(メリル・ストリープ)は、外交官の夫ポール(スタンリー・トゥッチ)の赴任に伴い、パリで暮らす事に。食べる事、お料理することが大好きな彼女は、フランス料理の名門ル・コルドン・ブルーで修業することに。やがてフランス料理本の出版の夢を抱きます。現代のニューヨークで暮らす30歳のジュリー(エイミー・アダムス)は、夫エリック(クリス・メッシーナ)と共働きです。学生時代は作家を夢見ていた彼女ですが、今は政府機関で911で被害を被った人たちのカウンセリングに当たっています。学生時代の友人たちは軒並み出世していき、取り残されて焦るジュリー。そんな彼女に夫は、料理好きだから料理のブログを書いてみたら?と勧めます。ジュリーが選んだのは、今も愛されるジュリアの料理本。365日で500種類以上の料理を作るというもの。さてジュリーの計画は無事遂行出来るのでしょうか?

まずはメリルの成りきりぶりを得とご覧あれ。ジュリア・チャイルドはテレビ出演も豊富だった、今もアメリカ人に愛される実在の女性です。185cmの大柄な体と甲高い声。天真爛漫な大らかな明るさで、次々と出会う人の心を掴みます。メリルはこの役のため体重も増量。自身とは異なる高い声で話し、のそのそした緩慢な動作をみせるも、ホントにホントに可愛いのです!辣腕編集長、ベテランジャーナリスト、不倫妻、逞しいシングルマザーと、とにかく何を演じても完璧なメリル。ジュリア役も余裕綽々で実に楽しそうに演じて、こちらまで嬉しくなります。観客に喜びと感動を与える、本当に素晴らしい女優さんです。

対するアダムスも大健闘。愛らしい外見に目が行って忘れがちですが、彼女もオスカー候補になった、立派な演技派です。笑って泣いて怒って不貞腐れて、いつもポジティブなジュリアと対照的な、素直に自分の感情を表すジュリーを好演。平凡な等身大のアメリカ女性を絶妙に演じて、アダムスにも非常に共感出来ます。

ジュリアとジュリーの共通点は、共に結婚して安定した家庭を築いていても、自分らしい生き方を模索していた点です。特にジュリアなど、当時裕福な生活を約束された夫がいるのに、「私が何が出来るか探さなきゃ」と思う人は少なかったでしょう。ジュリアは185cmの自分の体にコンプレックスを感じて、それがため婚期が遅れたと思うのです。それが「モテモテだったポールが私に恋をした(ジュリア談)」のですから、その時の女心の嬉しさは、充分察せられます。新居に入れば「ベルサイユ宮殿のようね!」、夫が仕事で成功すれば「私も誇りに思うわ」などなど、劇中彼女の絶え間ない夫への愛と敬意が描かれます。コンプレックスから解放された後の、新しい自分を見つけたかったのだと思いました。

対するジュリーは、平凡ですが誠実な夫もいて、ジュリアほどお金はないけれど、それなりに安定した生活です。周囲の出世を目の当たりにし、夫の出世を望むのではなく、自分が変化しようとする心意気がとても頼もしいです。

そして忘れちゃならない夫たち。妻たちに「君の好きなことは?」(ポール)「ブログを書けば?」(エリック)と、現状を打破して自分探しをしたい妻に、助言をして支える素晴らしさ。思えば二人のテーマである料理は、食べてくれる人がいてこそ、作り甲斐があるものです。「おいしかった」の一言は、何より料理するものを喜ばす言葉です。夫婦喧嘩して意気消沈のジュリーが、「今日の夕食はヨーグルト・・・」とブログに綴るのは、やはり脚本(アン・ロス)も監督も女性だなぁと、その繊細な演出にしみじみと感じ入ります。


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12月17日(木)
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