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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「デトロイト・メタル・シティ」

実はハード・ロックが好きです。ヘビメタももちろん含む。但し主に聞くのは70年代が中心という、云わば「ロック原始人」なため、今の曲はほとんど知りません。この作品の原作は未読ですが、私のテリトリーでもあるし、何より大好きな「KISS」のジーン・シモンズもご出演ということで、すんごい楽しみにしていました。演出にパンチ不足で、物足らない部分もあるんですが、たくさん笑ったし、まずまず面白かったです。
オシャレな都会的ライフを目指して、大分から上京してきた心優しき青年・根岸宗一(松山ケンイチ)。スイートな渋谷系ポップミュージックにはまり、夢はそのタイプの曲調でデビューすること。が!実際は悪魔的なデスメタル系バンド「デトロイト・メタル・シティ(DMC)」のボーカル、ヨハネ・クラウザーU世として、大人気を呼んでしまっているのです。この落差に日々悶々としている宗一は、ある日学生時代の憧れの人、相川さん(加藤ローサ)と、町でばったり再会します。
とにかく松ケンがいい!白塗りのクラウザーと宗一では、衣装から仕草まで全く違うので、演じる方としては比較的ノリやすかったのでしょう。大げさな身振りで口汚なく大ボラ吹く「カッコいい」クラウザーと、クネクネ体を揺らしながら、心優しくも気持ち悪いマッシュルームカットの宗一を、怪演&好演。普通ならやりすぎだよの芝居も、とてもこの作品には合っており、照れも恥ずかしさもなく演じているのが、とっても好感を呼びます。松ケンは何をやっても暑苦しくなく、爽やか系の役もOK。これは演技力以前の本人の素地も重要だと思うので、今以上に化ける事必死だと思います。
怪演と言えば、所属のデス・レコードの社長役・松雪泰子も出色でした。表現方法は過激ですが、DMCへの愛情も充分感じられます。これも照れて演じれば萎んでしまう役ですが、これでもかのはじけっぷりと下品ぶりは天晴れで、きつめのS的美貌とも相まってとても良かったです。そう言えば若い頃から「とっても美人だけど何か変」のキャラだった彼女、年齢が行ってどういう風に変化するのかと思っていたけど、ヌードなんか使わず、女優として上手く乗り切ったですね。

その他DMCのメンバー秋山竜二&細田よしひこ、取り巻きの大倉孝二や岡田義則、お母さん役の宮崎美子も、みんなギャグの間合いや息の合わせ方も上手く、とっても笑わせてもらいました。唯一よくわからん仕事のメディアプロデューサー役の鈴木一真は、イマイチだったかなぁ。あれでは胡散臭過ぎて逆効果。谷原章介だともっと良かったかも。
加藤ローサの「顔が綺麗で心が綺麗」”だけ”の相川さんも、すごくいいアクセントでした。両方綺麗なら、普通は完璧でしょ?しかしこの相川さん、それ以上の女性的や人間的な魅力が、全然ないのですね。人間性が薄口過ぎてペラペラです。宗一の大学の後輩役高橋一生が、ちょっと天然だけど人柄の良さをとても上手く滲ましていたのと、比較して下さい。原作を知る息子に聞くと、原作でも相川さんはそうなんだって。これはローサ嬢の演技力不足が功を奏したのでしょうね、うんうん。
渋谷系スイートポップの住人は、幸せを呼ぶ歌詞とは裏腹、どうも実態なく雰囲気だけに流されている感があるのに対し、反社会的なデスメタル系住人は、根性と魂がメラメラ感じられるのは、原作でもそうなんでしょうか?それなら上手く作者のメッセージをすくい取ってもいました。ヘビメタへの熱い愛を感じました。
ギャグやストーリーは、原作から抜き出しているのでしょう。すれ違い勘違いのシチュエーションが上手に描かれていて、とっても笑えます。宗一の葛藤も本人は深刻、描き方はあくまで軽くというのは正解だったです。ただ宗一が「生れながらのデスメタルの天才」と、社長に言わしめるのは何故か、その辺はちょこっと描いて欲しかったと思いました。
あと楽曲のレベルが低い。ダメだしされる宗一が作ったポップスと五十歩百歩。というか、ポップスの方が良かったかも。この辺は結構重要だと思います。
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08月24日(日)
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