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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「仁義なき戦い 広島死闘篇」(道頓堀東映閉館上映作)
今日は患者さんさんが多く、12時40分上映開始なのに、地下鉄に飛び乗ったのが30分。遅れること10分でしたが、何とか連日の鑑賞に漕ぎ着けました。今日は上映終了後、北大路欣也の舞台挨拶があることもあり、場内は二階まで超満員。「三階では座ってご覧になれます」との劇場の人のお声かけで、この劇場は三階まであると知りました。三階で観るなんて、これからのご時世、もう多分ないことです。これも閉館上映のお陰と、人生初の三階からの鑑賞です。
昭和三十年前後の、広島を舞台のやくざの抗争劇。今回は前作「仁義なき戦い」の主演広能役の菅原文太は脇に回り、狂犬のように凶暴な大友勝利役の千葉真一と、敵対する組のヒットマン山中役の北大路欣也が主役です。
このシリーズも劇場は未見。やはりテレビでチラチラ程度で、ビデオでしっかり見た事もありません。だってさ、清純な乙女(だったはず)がですよ、こんな、出て来る奴出て来る奴、不健康そうでとてつもなく下品で柄が悪い、その上顔が濃すぎる、そんなの積極的に観ませんよね?でも観ていなくて良かったです。当時観ていたら、二度と観ようと思わなかったはず。だがしかし!この年になると、この異様にみなぎるギラつくパワーは、とても魅力的に感じます。
昨日観た「昭和残侠伝」など、任侠物の人気に陰りが見え始めた1970年代初めに、この作品が作られました。今日のトークショー司会者の浜村淳によると、明治から昭和初期を描く任侠物は、言わば時代劇だとか。なるほどなるほど。義理人情に厚く、決して恩ある人は裏切らない、それはやくざとしての理想や美学を具現化して見せていたのでしょう。
しかしこのシリーズは義理人情はどこへやら、利権や金が絡むと、寝返ったり裏切ったり、狡猾だったり凶暴だったり。どんなにご大層なことを並べようが、やくざはやくざ、人の命がとても軽く扱われる血みどろの世界です。その狭い世界で生きる彼等がもがき苦しむ姿を、これでもかこれでもかと残虐シーンを盛り込み描くリアルさが、観客に大いに受けたのは納得です。時代が昭和三十年前後というのもあって、今観ても充分面白いです。
実話が元の「実録物」の走りのこの作品は、流石に脚本にも無理がありません。ところどころドキュメントタッチのナレーションがニュースを思い起こさせ、お馴染みにBGMが聞こえると、観客も一気に広島弁の世界へ誘われます。
しかしストーリー展開の面白さもですが、とにかく登場人物のキャラが超個性的なのが一番の魅力です。千葉真一のキレた演技は伝説だと読みましたが、なるほど〜股間をぼりぼり、放送禁止用語連発、その凶暴さはほとんど○チガイ。魅了はされませんが、夢に出てきそうな迫力でした。北大路欣也はガッチリ女性ファンのハートを掴む哀しきヒットマンの役で、やくざの命懸けの純情が義理人情ではなく、女(梶芽衣子)だったなんて、やっぱりグッときますよね。若い時の北大路欣也、濃いけど暑苦しさのない、すんごい男前なので、それもポイント高し。様式美をなぞる高倉健&藤純子の額縁に入った悲恋の描き方も良いのですが、私は身を切られる痛さと、生々しい男女の情の濃さを感じさせた、この作品の北大路&梶カップルの方が、個人的には好きです。
このシリーズと言えば菅原文太なんですが、この作品は脇に回ったせいか、他の連中より健康的で筋の通った真っ当な人に感じました。有名な焼肉のシーンは、犬が映っただけで、観客席がドッと湧きました。こういうの、楽しいんですよね。
個人的に特筆すべきは成田三樹夫。穏健派で頭が切れるやくざの若頭の役でしたが、こんな気品のある男前だったなんて!知性も感じられて素晴らしく、役者では今回一番の収穫でした。良い役者さんだとは思っていましたが、こんなに素敵だったとは知らなくて、何か今まで損したなぁ。そういえばテレビの「影の軍団」では、この人麿っちゅうか、お公家さんの役だったんですよね。それも悪人の。
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04月20日(金)
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