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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「父親たちの星条旗」
火曜日に観て来ました。私は戦争映画が苦手で、あまり本数は観ていません。よっぽど話題になるか良作だと聞かないと、観る気にはなりません。しかしこの作品は現在全米イチの監督と言って良いだろうイーストウッドが、硫黄島決戦を、日米二方の視点で描くと聞いて、本当に楽しみにしていました。神経性胃炎になったり、発熱したりで、ここのところ体調がイマイチなので、長い作品と聞いていたので、途中で寝るかな?と思っていましたが、戦闘シーン以外は静かにお話は進むのに、本当にあっという間の2時間12分で、途中からずっと泣いていました。76歳のイーストウッドが作ったからこそ、価値のある作品だと思いました。
太平洋戦争末期、硫黄島に上陸したアメリカ軍は、日本軍の意外な抵抗で長引く戦いに業を煮やしていました。士気を高めるため、山頂に星条旗を立てた6人の姿がカメラに収められ、たちまち本土では大評判になります。6人のうち生き残ったドク(ライアン・フィリップ)、レイニー(ジェシー・ブラッドフォード)、アイラ(アダム・ビーチ)には帰国命令が下ります。彼らを待っていたのは、「戦争の英雄」として、戦時下の資金集めに利用されることでした。しかしこのお話には裏があり、彼らが立てたのは二度目の旗だったのです。
全然ストーリーを予習していかなかったので、時空をいじったストーリーだとは知らず、最初はわかりづらかったです。名の知れているのは、ライアン・フィリップ、バリー・ペッパーなど少数なのが、それに拍車をかけますが、それも監督の想定内だったのでしょう。誰もがドクたちや死んでいった兵士たちになったかもわからない、観客にそう思わせるには、大スターは必要なかったと思います。フラッシュバックも多用されますが、演出・脚本ともわかり易く、段々と感情を高揚させていくのに効果的でした。
至近からの戦いの様子は、近年「プライベート・ライアン」、「ブラザー・フッド」などでも描かれてるので、特に目新しい感じはありませんが、やはり迫力はあります。惨たらしい遺体をそこかしこに見せることによって、怖さより悲しみを感じさせました。
英雄としての自分に浮き足立ち、PR活動にも熱心なレイニー。死んでいった戦友たちのことが忘れられず、英雄として祭りあげられる自分に激しく嫌悪し、精神のバランスを崩していくアイラ。違う形で自分を見失っていく二人に比べ、一番冷静で、忠実に上司からの命令を守るドクも、心の底では英雄として祭り上げられることに激しい抵抗感があります。お偉いさんたちはお金集めに一生懸命で、彼らの感情などどうでも良いのです。命懸けの戦地も安全な内地も、それぞれ違う意味で彼には冷たく厳しい世界です。
亡くなった兵士の母が、「あなたが志願しろ言ったから、あの子が死んだ」と、夫を責めます。父親の仕事は農業でした。父親はこの戦争で親にはつけてやれなかった箔を、息子がつけて帰国すると思ったのでしょう。未来のための志願が、未来を奪ったのです。「彼らは大学出なので、戦争には行かないんだ」というセリフもあり、「ジャー・ヘッド」で兵士たちが志願した今と、あまり変わっていないということです。
三人の中で、一番泣かせるのはアイラでしょう。彼の罪悪感で自暴自棄になる、人としての善なる弱さは、観ていてとても共感を呼ぶものです。彼が白人でもなく黒人でもなく、ネイティブアメリカンだという事が、一層彼の孤独感を増したのではないかと感じました。
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11月02日(木)
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