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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「グエムル 漢江の怪物」

昨晩ラインシネマの初日の最終で、末っ子と観て来ました。最近話題作は初日の最終が定番になりつつある我が家。息子によるとラグビーの練習も出来て、次の日も自由に使えるので、夜に映画館に行くのは良いことづくめなのだとか。三番目にして、やっと映画に関して気の合う息子に育って、感激の私。息子は当初「エイリアン」のような、ホラータッチの怪獣モノを想像していたようで、横でゲラゲラ笑う私に「笑ってええん?」と戸惑いつつ尋ねます。「ええよ!」と答えると、次から容赦なく爆笑する息子。まったりした、気の抜けたユーモアが笑いを誘いつつ、それが立派な伏線となって、震撼させられたり怖がったり。「殺人の追憶」や「吠える犬は噛まない」同様、世相や人の心の底を深く深く描く、どこを切ってもポン・ジュノの怪獣モノでした。
漢江の河川敷で売店を営むパク・ヒボン(ビョン・ヒボン)。頼りない長男のカンドゥ(ソン・ガンホ)が店を手伝い、次男のナミル(パク・ヘイル)は大学は出たもののニート状態。妹のナムジュ(ペ・ドゥナ)はアーチェリーの実力者ですが、ここ一番に気が弱いです。一家の希望の星はカンドゥの娘ヒョンソ(コ・アソン)。期待に沿うべく明朗快活な中学生に育っていましたが、ある日突然漢江に現れた怪物(グエムル)によって、さらわれてしまいます。このことを契機にバラバラだった家族は、一丸となってヒョンソを救いに向かいます。
韓国では公開までクリーチャーの露見は厳禁だったと知っていたので、「ジョーズ」のように小見出しに出てくるのかと思いきや、あっさり序盤で大暴れするので、びっくりしました。キャラクター製作のために、ニュージーランドのWETA Workshop(「キングコング」、「ロード・オブ・ザ・リング」3部作)や米国のThe Orphanage(「ハリーポッターと炎のゴブレット」「デイ・アフター・トゥモロー」)などが携わったと聞いていたので、どんな斬新なものかと期待していたので、その辺はちょっともっさり感じて、肩透かしでした。しかし動きが良かった。迫力あるのに流麗で、見た目より華やかでした。怪獣好きの方々も合格点くれそうです。
コメディタッチとも聞いていましたが、これがまた面白い。ガンちゃんのユーモラスでペーソス漂うダメ息子・ダメ親父ぶりが笑わせるし、最初ヒョンソが亡くなったと思った家族が、誰のせいだ!お前のせいだ!と取っ組み合いの末、いい大人が全員大の字にひっくり反って号泣するのですが、韓国人は喜怒哀楽が激しく表に出る性質で、ちょっとデフォルメしていますが、確かに葬式では周りが笑ってしまうほど号泣するのです。しかしながら皮肉ではなく、ジュノ監督は韓民族の愛すべきところだと言っているんでしょう。
すんませーん、ネタバレじゃないと書けないぞ!以下ネタバレ気味
一家一丸となってヒョンソを救おうという時、家長のヒボンがありがた〜いお話をしてくれているのに、子供たちは全員居眠り中で、また私は息子と爆笑。どこの国でもある、親と子の温度差ですね。しかし一番出来の悪い長男カンドゥを庇おうとする父の心が、私も三人子供がいるのでよくわかるのです。幸いうちは低いハードルながら、次男三男は長男を超えられず、下に行くほど出来が悪いのですが、それは親としては有りがたい事。下の兄弟に上の子がバカにされることほど、親にとって切ないものはないはずです。カンドゥのミスでグエムルに殺されてしまう時のヒボンの慈愛に満ちた顔は、「殺されるのが自分で良かった」ではなかったでしょうか?他の二人が後ろ髪を引かれつつ、父と別れを告げたのに、カンドゥだけが一人父の遺体から離れられない姿は、これも韓民族の掟である「長男至上主義」を、暖かく哀しく描いているのだと思います。
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09月04日(月)
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