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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「ブロークバック・マウンテン」
今春最大の話題作(多分)。手術前に観たかったのですが、体調優れず後回しに。21日まで家から近い難波の敷島シネポップで上映と知り、大急ぎで観てきました(やはりリーブルは術後まもない体では辛いと、「ヒストリー・オブ・バイオレンス」で思い知る)。オスカーでアン・リーが監督賞のみに留まったのは、ゲイの愛を扱う題材のためだと巷の評判でしたが、「クラッシュ」と両方観た私の個人的な感想は、題材のせいではなく、作品の出来も「クラッシュ」が上のように感じ、前評判の割には肩透かしでした。時々あるんです、こういうこと。今回は少数派の感想でネタバレ含みます。

1963年のアメリカ・ワイオミング。羊飼いの季節労働者として雇われた若者イニス(ヒース・レジャー)とジャック(ジェイク・ギレンホール)。厳しいブロークバック・マウンテンでの二人ぼっちの労働は、やがて友情から愛情に変わります。下山して二人は別れ、イニスは山に登る前からの婚約者アルマ(ミッシェル・ウィリアムズ)と結婚し、二人の娘にも恵まれますが、生活は厳しいものでした。そんな時4年ぶりにジャックから会いたいとの手紙が来ます。ジャックにも妻ラリーン(アン・ハサウェイ)と息子がいましたが、再会で二人の激情は募ります。以来人目を忍び、年に数日二人だけの時間を持つことだけが、彼らの生きがいとなるのですが・・・。

前半は山での労働場面の厳しさを丹念に描いています。山の風景は雄大なはずなのに、孤独と閉塞感を感じさせ、彼ら二人だけの世界であると自然と納得させられます。しかしそれでも尚、私には二人が結ばれるきっかけが唐突に感じました。しかしのちの描写で、誘いをかけたジャックは元々ゲイであったようだし、イニスの方は、幼い時父親からゲイは恥ずべきことだという強烈な刷り込みのため、自らの性癖を心の底に封印していたのかと思い、ここはまず問題解決。

しかし再会後がなぁ。イニス家の金銭的な厳しさ、そして子供は可愛さよりも煩わしさの方に焦点を合わせた演出でしたので、ジャックをひとめ見るなり激しいキスをするイニスに、ジャックと結ばれた時にはなかった嫌悪感が私を包みます。これってジャックへの長年秘めた愛ではなく、苦しく夢のない生活からの逃避ではないんでしょうか?年若く遊んだこともあまりなく結婚した彼には、大黒柱でいることには息苦しさもあったでしょう。しかし人の親となるにの年齢は関係ありません。生活の苦しさからパートに出る妻には、急に仕事になったからとみる予定だった子供達を、パート先まで押しかけて渡すのに、ジャックとの逢瀬のためには平気で仕事を休むなど、妻アルマは夫の秘密を知った時どんなに辛かったろうと、とても同情しました。

ジャックの方も妻ラリーンが資産家の娘だから近づき、「生活のため」の結婚であるとイニスに告白します。これは俗にいうカモフラージュ?「そうするしか仕方なかったんだ」って、彼はロデオ好きと描かれていましたが、自分に才能がないと認めて、どんな仕事でもする気なら、自分の口くらい養えるだろうが?それで自分の性癖まで曲げるなんて、とっても女々しく私には思えました。ふと同じリーが母国台湾で監督したゲイテイストの作品、「ウエディング・バンケット」で、女性を妊娠させたパートナーに、「寝たことが悪いと言っているんではない。僕が怒っているのは、妊娠させたことだ!」と激怒した潔さが思い出されました。舅がいやな親父に描かれていまいしたが、結婚の動機が動機なので、親に嫌われても当然の気が。それがイニスへの想いに拍車をかけたのは理解出来ますが、やっぱり反省すべきは自分じゃないでしょうか?これも観客のジャックへの同情ポイントに描かれている感じですが、その手に落ちない私は、ここでも置いてけ堀です。


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04月23日(日)
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