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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「スタンドアップ」
本年度ゴールデングローブ賞主演女優賞(シャーリーズ・セロン)、助演女優賞(フランシス・マクドーマンド)ノミネート作品。この調子でオスカーもノミネートか?ということころですが、もうこの二人にあげちゃって下さい、お願いしますよ!というくらい胸を熱くさせられました。女性なら誰でも共感や賛同出来る作品ですが、男性にも受け入れやすく作ってあるところが、単なるフェミニズム映画とは一線を画していると思います。20年足らず前のアメリカの実話が元になった作品です。
夫の暴力から二人の子供を抱え、故郷の北ミネソタに帰って来たジョージー(シャーリーズ・セロン)。子供の父親が違うことで、ふしだらな女と烙印を押された彼女は、隣近所は元より父親からも疎まれます。自立して実家から出たいジョージーは、幼馴染のグローリー(フランシス・マクドーマンド)から、鉱山で働かないかと誘われます。父もグローリーも働く鉱山は、男ばかりのきつい環境ですが、今の収入の6倍稼げることもあり、ジョージーは鉱山で働き始めます。しかしそこは信じられないほどの男性本位の世界で、壮絶なセクハラを女性たちは受けていました。
日本でもこの頃、ジョージーのような女性はたくさんいたと思います。アメリカの田舎町は日本以上に保守的だと聞いていましたが、これほど世間の風当たりは厳しくなかったように思います。母の不行跡が大っぴらに子供にまでそれが及ぶなども、あまりなかったように思います。子供を連れ顔に大きな痣を作って実家に戻ってきたジョージーは、夫の暴力の耐えかねては一目瞭然なのに、父親は「浮気がばれて旦那に殴られたのか?」の一言に、私は唖然。それまでの父娘の確執が一気にわかります。
しかしジョージーのような美貌の女性が、男に媚を売る仕事を選ばず、お金のために過酷な肉体労働を選んだことに彼女の心が表れているのに、何故こんなに理解者が少ないのか、そのことにまず憤りを感じました。彼女は父の違う子を産み、これからは男性に依存せず母親としてだけで生きていこう、そう思ったに違いありません。それは同じ鉱山に働く女性たちも同じ。それぞれお金が必要な事情を抱えていなければ、普通の男性でも辛い仕事は選びません。同性の私にはとても立派な心栄えだと感じるのに、鉱山で働くことは「男女」と言われるのです。字幕はこれですが、セリフは「レズビアン」のようでした。アメリカではひどい差別語だと聞いたことがあります。
鉱山内での数々の信じられない嫌がらせはもう虐待に近く、観ながら私の顔は鬼のような形相になっていたかもわかりません。それほどひどい。「女が男の仕事を奪おうとしている」「仕事が減り給料が減ったので、鉱夫たちにははけ口が必要だ(それがセクハラ)」など言う信じられない上司を初め、この無教養な鉱夫たちですが、これは過酷なブルーカラーで学がないからでしょうか?それだけではない群集心理、自分の辛さから逃げるためその下の者を作り、いたぶることで安心する差別の気持ち(「ミシシッピィ・バーニング」で学ぶ)、何より男性全般に大なり小なり潜む心を、ある意味遮断された閉鎖的な鉱山の中なので、彼らは表しやすかったのだと、女性監督ニキ・カーロの演出からは感じられました。
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01月19日(木)
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