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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「四月の雪」
すみません、ごめんなさい、全然ダメでした。ホ・ジノ監督は「八月のクリスマス」と「春の日は過ぎ行く」の二つ観て、一勝一大敗の監督。「春の日〜」の演出が生理的に合わず、良いという感想を読んでも「私はそこがいややねん」と思ってしまう始末でした。それでも観ようと思ったのは、お互いの配偶者が不倫をして事故で意識不明の重体、その看病をしているうち、二人の間には愛が芽生え・・・といった、とっても成瀬己喜男な題材だったから。ホ監督の演出が「春の日〜」のイライラ感ではなく、「八クリ」の慎み深い情感に感じるかもと期待していましたが、私には「春の日〜」以上のしんどい作品でした。今回ネタばれです。

コンサート会場の照明ディレクター・インス(ペ・ヨンジュン)は、仕事中に妻の自動車事故の連絡を受け、ソウルから遠く離れたある町まで駆けつけます。しかし妻は会社には休暇届を出し、インスには出張と偽っての不倫旅行で起こした事故だったのです。病院には不倫相手の妻ソヨン(ソン・イェジン)が先に来ていました。意識不明の重体の二人の世話のため、同じホテルに泊まりこんで世話をするうち、二人の間には微妙な感情が芽生え始めます。

ホ・ジノはセリフやはっきりとした背景を説明せず、観客に登場人物の心を
理解してもらうのを委ねる手法の人です。しかし私はリアリティ至上主義ではありませんが、この作品でははぶきすぎ。まず昔とはだいぶ韓国の家庭事情が違うでしょうが、例え沖縄の人が北海道で事故を起こすような距離であっても、夫婦二組に合計八人の親がいるはずなのに、見舞うのがインスの妻の父だけとは不自然過ぎ。これは韓国に限らず、日本の方でもご理解いただけると思います。

妻の不貞をインスは義父には伝えません。これは優しさや思慮深さとは違い、このあと妻とどういう関係に転ぶかわからないインスの優柔不断さに私は思えました。それに何より「お家」大事の韓国人が、どんな形にしろ意識不明の大怪我をした嫁のことを、自分の母に知らせないのは不自然です。まぁそういうシーンを挿入すると、「こんな嫁、のしつけて実家に返せ!」となるので、作風に合わなかったかもしれませんが、あまりに辻褄が合いません。

親が来ないのだから、兄弟も来ない。4人とも一人っ子?そんなアホな。私の妹がソヨンの立場なら、どんな遠くでも妹の心の支えになればと、飛んで行きます。その割には他人のインスの部下が見舞いに来て、「俺が変わりに事故に合えば良かった」みたいにセリフを言って、ウジウジグタグタヨン様は絡む。しかし泣いて吐露する割には、妻への愛憎がセリフのみで語られるだけで(ベッドの妻に「死ねば良かったんだ」、二人が意識を取り戻したらというソヨンの問いに「復讐しましょう」など)、観客の心に入り込む描写が希薄です。

例えばインスがICUから個室に移った妻の裸体を拭くシーンがありますが、上半身の背中だけを見せ、無表情でちょっと腕を拭くだけでは、私にはインスの心が見えません。このシーン前にインスは妻が不倫相手とベッドでいちゃついているビデオを見ています。夫婦にはそれが一番ではありませんが、セックスも大切なことです。この体は他の男と寝た不潔な体だという嫌悪感、それと同時に自分も愛した体なのだという情がない交ぜで描かれなければ、意味がありません。そう思わすには時間も短いしヨン様も演技不足でした。


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09月24日(土)
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