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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「Black Box Diaries」
それに比べて、タクシーから出る二人を接客したドアマン氏には、感動しました。民事裁判での証言を頼むと、「私は以前から性犯罪の量刑が少ない事に疑問を感じていた。警察に証言したいと言ったら、会社が拒んだ。あなたは私よりずっと辛かったでしょう。名前も出して下さい、証言します」。ここで監督は慟哭、私は号泣。何の縁もないドアマン氏の正義と勇気を後押ししたのは、監督の命がけの勇気だったと思います。

監督の裁判ののち、性犯罪の視線は変わってきたと思います。私が若い頃は、肌を露出するな、夜道は歩くな、それでレイプされたりしても、女に隙があったから当然だ。それが当たり前でした。男をそういう気にさせた、女が悪い、です。そう信じ込まされ、身を守ってきたはずが、否応なしに、男性から被害を受けても、何も言えない女性たち。「傷物」と蔑まれるのは、女性なのです。この悪しき女性蔑視、人権侵害に、日本において風穴を開けたのは、私は間違いなく伊藤詩織氏だと思います。

もう一つ、私が深く感じ入ったのは、ご両親の存在です。映画を通じて、良いご家庭に育ったのだろうと、感じました。監督は色んな人に助けて貰って感謝していると語りますが、そこには親は出てこない。監督にとってご両親は甘えるのではなく、心配させてはいけない存在なのでしょう。お父様は裁判に反対でした。それでも突き進んだ娘。娘の窮地に、見守るだけしか出来なくて、さぞご両親は辛かったでしょう。自立し、お互い尊重しあえる親子の姿でした。

自分の身の上に起こった特異な出来事を、攻撃的に社会問題として提議して、見事に昇華させた一人の女性を映したドキュメントです。監督は、性被害は一生忘れる事は出来ないと仰いました。劇中、「今日は私は公にレイプされた女だって、世間に知れ渡った日だ!」と自虐的に語るシーンがあります。ふとした拍子に、その事がフラッシュバックするでしょう。その時はこの作品や書物が、彼女の心の支えになるかと思います。力作です。

01月28日(水)
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