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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「愛を耕すひと」
滑稽だというには恐ろし過ぎる、足るを知らない男たちの戦いは、アン・バーバラの手によって終止符が打たれます。そこにはデ・シンケルへの怒り、夫であったヨハネスや、娘同然のアンマイ・ムスへの想いだったと思います。ケーレンへの愛もあると思いますが、彼女は認めたくなかったでしょう。
全てが終わり、ケーレンは何を得て何を失ったのか?彼が欲して止まなかった貴族の称号は、本当は彼には必要が無かったと意味するラストは、あの壮絶な戦いを観た後なので、深い含蓄があります。
やっぱりマッツは母国のデンマークの作品がいいです。イケオジ風のダンディズムが前面にでるようなハリウッド作品も良いですが、信念の男を深追いすれば、滑稽で愚かな男が浮かび上がります。こんな実は情けない男が、自分なりの真を見つける、そんな役柄を演じる時のマッツは、天下一品なんですよ。私は情けないマッツの方が好きだなぁ。
デ・シンケルを演じたシモン・ベンネミヤムもとても良かった。憎悪とコンプレックスにまみれた中に、卑小さを隠し持ったデ・シンケルを、振り切った演技でお見事でした。
当時の宮廷の腐敗ぶりや、タタール人への差別、黒い肌への偏見なども、きちんと消化されていました。伝え聞くところによると、この時代のデンマークの王様は、アルコール依存気味だったとか。高校生が、ビール10杯とか平気でいっちゃうお国柄なので、納得でした。壮絶な経験の中、荒涼とした自分の心に、愛を耕したケーレンに、穏やかな余生が訪れますように。それが血を流した全ての人々への鎮魂になると思います。
02月21日(金)
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