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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「 PERFECT DAYS」
平山は、超寡黙なのに、どこでも絶妙な距離感を保ちながら、人々に好かれています。身だしなみが良く、行儀の良い所作。他者への穏やかな気遣いが自然と出来るところなど、、育ちの良さと教養が浮かびます。そして、タカシの想い人のリサ(アオイヤマダ)から、ほっぺにチューされて、思い出し笑いなんかして、なかなかお茶目なんだなぁ。適度に抜けていたり少々隙もある。人格者だと判るのに、構えなくても良い人です。ちょび髭のせいか、少しチャップリンを思い起こしました。この地味で少しユーモラスな日常を映すだけで、平山が愛すべき好人物であると理解させる脚本と演出に、本当に感激しました。
ニコはミドルティーンでしょうか?家出先に、何年振りかに会う伯父を選んだのは、昔から平山を慕っていたのでしょう。安全な血縁者を選ぶことに、無鉄砲さのない、賢い子だとも思います。闖入者にもルーティーンを壊さず、柔軟に対応する平山。物事を受け止める度量があるのでしょう。
しかし、娘を迎えに来た妹との再会は、何事もさざ波として受け止めていた平山に、大きな感情のうねりを齎します。運転手付きの車で迎えに来た妹の言葉から、元は平山も裕福な出だと判ります。皮肉めいて「こんな家に住んでいるのね」と苦笑いする妹ですが、娘を預かってくれたお礼に、平山の好物を差し出します。お金なら、決して受け取らない兄だと解かっているのでしょう。施設に入っている父に会いに来て欲しいと告げ、「兄さん、本当にトイレ掃除の仕事をしているの?」と問いかける顔からは、侮蔑ではなく、無念さが滲むのです。私の兄は、もっと優秀な人なのに、という気持ちなのでしょう。
妹と姪を抱きしめ、見送った後、男泣きに泣く平山。初めて見せる感情の昂りです。平山に何があったかは、描かれません。想像するに、裕福な気位の高い家庭では、平山の純粋な感性や感受性を受け止めて貰えず、家を飛び出してしまったのかな?その過程で、父親に傷つけられたように想像しました。平山の涙は、父の、家族の期待に応えられなかった、己の不甲斐無さに対してだったのでは?と感じると、私にも胸に迫るものがありました。縺れた紐の原因が、自分にあると顧みる事は、なかなか出来る事ではありません。
ママの元夫(三浦友和)との会話は、人生の終盤に差し掛からねば解らない含蓄があり、ここも心に染み入ります。説明のつかない自分の感情は、老いては無理に答えを出そうとはせず、自分の感情に従っても良いのだと思いました。
ラストの、涙を堪えて笑おうとする車中の平山に、堪らず私も涙しました。毎朝の空を見上げての笑顔は、彼なりの「火打石」だったんでしょう。「パーフェクトな日々」は、平山が自分を見失わず、生きる事に誠実に向き合って、作り上げた日々なんですね。どんな境涯でも、人生の豊かさは自分で見つけ、自分で育むのだと、教えてくれる作品です。登場人物皆が、祝福されますようにと、祈らずにいられません。
01月08日(月)
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