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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「月」
これと同じことを、現在介護に携わる方々も感じたんじゃないかな?例えば糞尿まみれで個室に監禁されている利用者。認知症に症状として、便に固執するのは知っていますが、監禁はあり得ません。総がかりでお風呂に入れるはずです。お友達によると、原作でもこの描写はあったそうな。創作なのか実話なのか、稀にはあるかも知れません。私が言いたいのは、何故そのような「滅多にない」扇情的な場面を描くのか?です。

その他にも、施設の体制がぐちゃぐちゃ。男性二人が当直の時もあれば、事件が起きた時は陽子一人が当直。暴れる入所者が懸念される施設なら、女性一人の当直はあり得ないはずです。いたずらに入所者のてんかんを誘発する職員やら、やる気のない職員ばかり描き、何故頑張って介護する職員を描かかないの?数で言えば、まともな介護職員の方が、「絶対」に多いです。そんな片手落ちの描写の羅列で、真に問題定義が出来るとは、思いません。

心優しい職員だったさとくんの、心の急変も謎が多い。糞尿にまみれた入所者と自分を同一視してしまった時からです。でもその入所者の異変は、薄々は判っていたはず。背中を覆う刺青を見せる必要は?大麻吸引の場面を見せるのは?彼が前科者か、似たり寄ったりだと言いたいと思いました。介護は人手が足らず、受刑者が刑務所で資格が取れたはず。それを想起させる人が殺人に手を染めるのは、真面目に働くその人たちへの偏見を、助長するのじゃないですか?

それと支離滅裂な言動から、さとくんは事件の前に措置入院となります。措置入院は、自傷他害の恐れありの人を、二人の精神科医が入院妥当だとして、初めて入院。二週間で退院はあるかも知れない。でもこんな短期間の入院なら、保護する人がいないと、退院出来ないのでは?いないなら、警察の監視下に暫く置くと思いますが。

私は現職の前は、13年間医療事務をしていました。最後は精神科のクリニックに5年半いました。勤める前は、自分は差別心はないと思っていました。勤めて直ぐ感じたのは、あぁ私はこの人たち、人であって人ではないと思っていたんだ、差別してたんだよと、痛感しました。「僕の友達がアルカイーダで、エリザベス女王の友人なんです。今ポンドが下落しているでしょう?女王が泣いているらしいですよ」と、ニコニコ話す患者さんと、私は普通に映画の話で盛り上がっていました。妄想は確かに凄いですが、それ以外は至って普通。皆、変わった事は常に言うので、それも楽しい。バカにしているのではなく、単純に面白いのです。

それと同時に、とにかく決まりを守れない、自分勝手が過ぎる人が多いので、あんなに患者さんの悪口を言って発散した科もないです。しかし私は受付だったので、患者さんの医療者側への悪口もいっぱい聞きました(私の悪口も言ってるだろう)。同じ土壌に立っているから、悪口合戦になる。この人たちも私も、人間同士なんだよ。そして精神病も障害(知的障害、発達障害もたくさんいた)も一様ではなく、人柄も気質も理解力も様々です。人格とそれらは別物だと思い知ります。私が精神科に勤務した一番の収穫はここです。

これは介護職についた人も、同じだと思います。私なんかより、もっともっと厳しい環境に身を置いた方々の方が、障碍者は個体ではなく、人間なのだと、痛感していると思います。それは志がなく、「でもしか介護職員」もそうだと思う。私は昨日今日来た洋子の告発なんかではなく、ベテラン介護職の人への敬意を持った、そういう描写が観たかった。それは決して綺麗事では、無いはずです。

介護職の人の離職は、短期間の人はともかく、仕事そのものが嫌になったは、少ないと思う。理由は低賃金、劣悪な勤務体制、スタッフの人間関係の悪化ではないですか?せっかく「こんなに大変で給料は17万」というセリフが出たのに、それをストーリーに絡ませず、勿体ないと思いました。さとくんも、これらの要素で病んでいった、の方が、説得力があったと思います。


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11月06日(月)
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