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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「せかいのおきく」
お互い憎からず想い合っている二人。それはおきくが声を失う前からです。出会った頃の中次は、紙屑拾い。今は下肥買い。おきくには仕事など、どうでもいいんでしょう。中次が好きなのです。読み書きのお手本で、「ちゅうぎ」と書こうとして、思わず「ちゅうじ」と書いてしまい、嬉し恥ずかしで身悶えするおきくが、本当に愛らしい。私が萌えてしまった(笑)。

中次にとっておきくは、武家の娘で高値の花なのです。声を失った今がチャンス!等、下品な思考は一切無し。この人格の高さを、おきくは見抜いているのですね。この素直で愛しい二人の想いが成就するかどうか、本当にヤキモキしました。

もう隠居して良い年齢なのに、新たな仕事の為に引っ越しをする孫七(石橋蓮司)。死ぬまで働くだろう様子に侘しさはなく、希望すら見えたのは、監督の計らいなのでしょう。全編に仕事をする事の尊さを感じます。

江戸の末期に生きる彼らの生真面目で心映えの美しい生き方は、色々迷子になりそうな、今を生きる私たちに、良き指南となり得ると思います。

出演者はみんな絶品。菅一郎は、演技力こそやや見劣りしますが、初々しさでカバー。中次そのものでした。それと真木蔵人!何と和尚さんの役!やんちゃで尖った彼しか思い浮かばなかったので、もうびっくり。朴訥な和尚さんで、きっとお説法は苦手かな?(笑)。でも人間力でカバーできるお坊様ですよ。すごいサプライズだったけど、バチッと作品にハマった好演でした。

さて、「せかいのおきく」とは、「世界中で一番好きなおきく」という、中次の気持ちを表した題名だったんですね。良い事教えますね、源兵衛。男女とも、惚れた人には「せかいじゅうでいちばんすきだ」と言いましょう。

05月02日(火)
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