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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」
まぁこの辺で泣いたわけなんですが、もう一つ落涙したのが、ディアドラが「世の中は私たちのような可愛くない女が回してる」と言うセリフです。ディアドラ=カーチスは、両親ともスター俳優の14光女優。しかし美しいヒロインにも見向きもせず、若かりし頃はホラー映画の絶叫クィーン、その後もジンジャー風味の役柄が多く、可愛い女の役柄は皆無。このセリフの直後、いがみ合っていたディアドラを、エブリンは抱擁します。それは男好みの「可愛い女」とは距離を置き、常にタフな女を演じ続けてきた、ヨーとカーチスが重なり、思い切り泣きました。そんな事を痛感した後だったので、二人のオスカー受賞は、作品賞より嬉しかったです。
観た後で知りましたが、監督のクワンは、撮影時にADHDと診断されたとか。実はエブリンも、設定ではADHDなんだとか。冒頭、膨大な書類を整理出来ぬまま、料理したり、店に出たり、あれもこれも中途半端なのが気になったけど、忙しくて、混乱しているのだと思っていました。この混乱こそ、映画の肝だったのかな?マルチバースの設定ですが、そうではなく、エブリンの整理しきれぬ頭の混乱を表し、エブリンは正しい導きさえあれば、超人的な何者かになれたのでは?と言う見方も出来る気がします。
新聞で読んだ、とある療育センターの所長さんの談話が心に残りました。「幼児期の早い段階で発達障害を見つけ出し、療育機関で学ぶ機会を与えれば、必ず社会に溶け込める。子供が少ない中、障害を持つ子供を手厚く教育するのは、将来の税収アップに繋がる事で、これは国の義務である」と言う内容でした。精神科勤務の時、知的や発達に障害を持った事を知らず、世の中でもみくちゃにされて、精神を病んでしまった患者さんたちを、たくさん見てきた私には、すごく心に響く談話です。
パワー爆発、ハイテンションで繰り広げられるバカバカしい中、このように「多様性」とは何か?も、しっかり盛り込まれた作品です。当然のオスカー受賞だと、私は思っています!
03月14日(火)
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