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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「夜明けまでバス停で」
千春は店長として、三知子たちを解雇した事の無念さを、必死になって晴らそうとします。彼女もずっとずっと我慢していたのです。その我慢を止めさせたのは、三知子たちを思いやる気持ちです。あぁ、人の気持ちはそうなっている。自分のためだけに生きる事は、やはり「心が貧しい」のですね。彼女もまた、「貧困」に喘いでいたのでしょう。一番深い感情を抱いたのは、私は千春でした。

胸をいっぱいにして、胸を張りながら、三知子に自分の現在を報告する千春に、返事する三知子の答えは(笑)。私はここで大笑い。こんな悲惨な目に遭った女性たちを描いて、ラスト笑顔になれて元気が貰えるとは、思っていませんでした。でも三知子は、「店長」とは呼びかけず、「ちーちゃん」と呼び掛けていました。内容はあれですが(笑)、千春は嬉しかったんじゃないかな。「私もあなたと同じです」と言う千春の言葉に対しての三知子の返事が、「ちーちゃん」だったのだと、だいぶ経ってから、思い起こしました。「あれ」は、本当にしたいのではなく、ただの現実逃避って事です(笑)。

高橋伴明は高名な監督ですが、私はそれ程作品を観た事はなく、作家性を語れないのが残念です。この辛い題材を見事に料理して、コロナ禍に喘ぐ市井の人々にエールを送るなんて、凄い監督だと思います。これが円熟ってもんなのかな?是非ご覧ください。

11月02日(水)
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