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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「茜色に焼かれる」
もう一人、脇役ながら私の心を揺さぶったのがケイちゃん。良子とは姉妹のような友好関係を結びます。一型糖尿病を患い、父親に性的虐待をされて、天涯孤独のような境遇で、DVヒモ男と暮らしています。ヒモ男と縁が切れないのは、生い立ちが関係しているのでしょう。でも風俗の仕事を嫌い、自分に挨拶する純平に、「いいなぁ、こういうの」と、嫉妬ではなく、満面の笑みを表す彼女は、崩れそうな中、自分を奮い立たせ、自尊心は保とうとしており、健気過ぎて、彼女にも泣けました。ケイちゃんの存在無くば、良子は自分の感情に蓋をしたままだったと思います。

侮辱的な上からの物言いをする弁護士(嶋田久作)、年齢で自分を蔑む風俗の客、そして心の拠り所にしたかった同級生の裏切り。とうとう怒りが爆発する良子。

良子やケイちゃんは弱者です。後ろ盾のなく経済力もなく、学もない人たち。弱者は理不尽な状況でも、黙って怒りを覚えないふりをするしか、生きる術がない。でもこのコロナ禍が、そんな処世術さえ通用しなくなったと、彼女たちを見て、考え込んでしまいます。

弁護士、上級国民、風俗の客、夫やその友達、同級生。男がクズばっかりで描かれたのは、世の中での「上下関係」を端的に表したかったからかと思います。永瀬正敏の風俗店店長が、辛うじてましだったのは、皮肉かな?

私は自分の身の上に起こる理不尽に、怒るのは大切だと思う。寛容さは大切ですが、それとこれとは話が違う。結局劇中、一度も怒れなかったケイちゃんの行く末が、その先を暗示しているように思えるのです。あのお金は、自分の生きた証に使いたかったのでしょう。

怒って感情をクルールダウンさせて、その先を考える事。大事な事だと思います。茜色の夕焼け時、「母ちゃん、大好きだよ」と、良子に言う純平。ほら、男に言われるより、100倍は生きる勇気が湧くだろうが。ここはむせび泣くところなのに、デレデレと「もう一度言って」と言うのが、良子らしいかな?良子とお友達になって、もうちょっと賢い生き方を啓蒙したくなりました。ケイちゃんのお金、大切に使ってね。

06月22日(火)
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