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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「岬の兄妹」(Amazonプライム)
身体障碍者・中村がお客として、リピーターになります。真理子を物として扱う客が多い中、相憐れむ気持ちが強いのか、真理子に優しい中村。なので彼を好きになる真理子。二人とも気持ちが解る。「37セカンズ」の渡辺真紀子のような、さばけた女性は、そうそういないでしょうし、高いお金払って気を使うより、自分に好意を寄せている真理子がいいでしょう。でもそれは好意で会って、恋でも愛でもないのは、中村自身が一番知っている。

真理子が妊娠した時、父親になってくれと懇願する良夫に、「そうやってお金取るんだ」「好きじゃないので無理」と。即答。取り付く島もなく言い切る中村は、今まで障害のため、女性関係では散々煮え湯を飲んだのだと、思いました。そして良夫も、中村なら真理子とお似合いと、勝手に思い込む。自分も障害者なのに、障碍者を差別する様子に、とても現実的だと感じました。

それと兄妹の家、中村の家、両方が段ボールや新聞紙で窓が張り巡らされ、自分の生活=心の内を観られたくない様子が出てきて、考えさせられました。

お話は、元の造船所に再び良夫が戻れるようになって、この無頼な生活と別れを告げるかと思いきや、電話の音に、真理子が「仕事?」と、目をキラ付かせて終わります。観客に委ねるラストです。

この二人が一見奈落に底に落ちたように見えたか?は、私は戦犯は世の中でも、知恵のたらない良夫でも、酷薄な幼馴染でもなく、二人の母親だと思う。

勿論、社会や周囲が温かい目で二人見守る事は、とても大切です。でも相手の善意を促すのは、当事者の頑張りだと言うと、厳しいかな?良夫が生まれながらの障害なら、身体障碍者手帳を申請すべきだし、真理子も知的障害を含む自閉症に思えたので、療育手帳を申請出来ます。生まれながらの障害は、私の記憶では、年金未納でも障碍者年金が貰えたはず。これ全部、自分からの申請でないと、需給出来ません。

私が精神科で勤めていた時、仲の良かった精神保健福祉士から聞いた言葉で、肝に銘じたのは、「障害を追ったら、福祉や医療の社会資源と必ず繋がるべき。そうすれば命は助かる」でした。

幼馴染の冷たさも感じましたが、当事者も自分たちで何が得られるのか調べ、声を上げなきゃいけないのです。そうすれば、時間はかかるでしょうが、良夫は障害者枠で仕事を得られ(彼なら大丈夫!)、真理子は施設に入り、売春以外の仕事が与えられるはず。お涙頂戴も無く、社会を糾弾するでもない世界観で描いたこの作品で、私が痛感したのは、この事です。私はと言うと、相手が大きなお世話の顔をしたら止めますが、ちょっとお節介な親切を、今まで通りして行きたいです。

05月25日(火)
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