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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「グリーンブック」
私は絶対韓国人には見えないようです。私が在日だと言うと、「ほんまぁ。ケイケイさん、きちんとしているし、全然見えへんわ」と言われた事もあります。これは微妙に傷つく(笑)。でも言った人は私を褒めたつもりで、悪気はないのですね。なので私も、複雑な気持ちは隠し、曖昧に笑顔を返しました(←我ながら日本的だ)。でもこの場合、怒る人もいるはず。私はそれも間違いではないと思います。結局リーの批判は、こういうことじゃないかな?
差別される側でも、皆が同じ意見であるはずはなく、また同じ必要もないと言う事です。
因みに私が在日と知って、在日への偏見が薄くなったと言われた事もあります。これは積極的に嬉しいです。これに怒る人は間違っています(笑)。
シャーリーが自分は白人でもなく、黒人でもなく、人間扱いされていないと叫んだ時は、心の底からシンパシーを感じました。私たち在日がそうだもの。日本では韓国人と差別され、韓国では日本人と差別され。私たちは国籍は持っていても、現実は在日と言う人種です。
シャーリーが見知らぬ黒人ばかりの安酒場で、その土地の黒人たちと和気藹々とセッションする場面が胸を打ちます。シャーリーの心の澱を、彼の才能と血が洗い流してくれたのですね。今まで誰もシャーリーを同胞の元へは連れてきてくれなかったんですね。トニーがシャーリーを連れてきたのは、トニーが同胞の存在の重みを知っていたからでしょう。これも私にも当てはまります。
ラストシーンは、ほろ苦さで終るかと思っていたら、その逆だったので、とても嬉しかった。そういえば、トニーは言っていました。寂しい時は、自分から寄り添うものだと。トニーは美人で聡明な奥さんと可愛い息子たちに、与える愛情を育てて貰ったんですね。
オスカー受賞のアリは、黒人ではあまり見ないスマートでエレガントな個性の俳優で、初登場時のアフリカンな衣装も王族っぽく見事な着こなしで、オスカー授賞式の伊達男ぶりも素敵でした。この作品でも文句なしの好演。
ヴィゴは上手かったんですよ!あのもの静かなヴィゴが、でっぷり太って腕っ節が強くて、口先三寸の陽気なイタリヤ系の善人を演じて、その人にしか見えなかったです。
個人的に、トニーにもシャーリーにも、強くシンパシーを感じる内容で、私には忘れられない作品になりそうです。薄口に感じる作りですが、人種の坩堝のアメリカでは、私のような感想を持った人が大勢いると思います。語り口はライトでも、メッセージはヘビー級の作品。
03月09日(土)
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