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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「天才作家の妻−40年目の真実−」
この夫のピントの外れた、小物感卑小感まんたんの「口ごたえ」には、冷笑を通り越して爆笑したわ。ピント外れは、夫あるあるだわね。内助の功の妻に対しての発言でも、妻は怒りますよ。この夫、自分で本当に書いていたら、さっさと糟糠の妻を捨てて、トロフィーワイフに乗り換えるタイプですよ。「僕は君のものだ!」と言う台詞にも噴飯。散々虐げられて、今更言われて、誰が嬉しいもんですか。私がこの夫の台詞で一番感動したのは、「僕を捨てないでくれ!」でした。

それでも夫婦であり続けたのは、ジョーンは夫婦の夢だけではなく、自分の小説を人々に読んで貰いたい切なる希望があったはず。これが物書きの性なんでしょう。

それ以上に面白かったのは、盛大な夫婦喧嘩が始まると、娘の出産の知らせが入り、夫婦で大喜びしてお開きになったり、憎しみ満開の時、夫が倒れて甲斐甲斐しく妻が寄り添ったりと、長い年月夫婦でいた人にしかわからない哀歓が、随所に滲みます。夫婦の別れぬ理由を描くのに、これはとても良い演出だったと思います。どんなに夫にないがしろにされようと、諸々の事を踏まえると、妻でありたかったのは、ジョーンの方だと思います。夫の方も好き勝手しながら、ジョーンを本当に愛する気持ちはあったと思います。愛だとか、打算だとか、それを超えた人達だけが、死ぬまで夫婦を継続するんじゃないかしら?

夫婦の集大成とも言えるべきノーベル賞授賞で、皮肉にも心の底に覆いかぶしていた感情が噴出した妻。彼女の感情を静めるには、最適の成り行きだったと思います。夏樹静子が小説を書き始めた動機は、娘を出産し、この溢れ出る母性を吐き出したいとの想いからだと、昔読みました。それが「天使が消えていく」です。ジョーンも似た事言ってたしな。多分空白のノートには、文壇を揺るがす小説が、今後書かれる事でしょう。

原題は「THE WIFE」。才能ある作家でなくても、長年妻稼業をしている人なら、万国共通理解も共感も出来る作品。

02月03日(日)
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