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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「人生はシネマティック!」
同じ政治局内で、立ち位置が異なるムーア(レイチェル・スターリング)とカトリンですが、そこは女同士。プライベートで悩むカトリンに、親密なアドバイスを出します。やっぱり女同士はこうでなくちゃ。かの排除発言の前に、総選挙後の首相は誰が良いか?と言う討論をテレビで観ましたが、田島陽子センセイが、「小池百合子」と書いたのには、びっくり。政治的スタンスは、ほぼ真逆のはずなのに。私はそこで、男社会で苦しみもがいてきた、彼女の悲哀を見た気がしました。女同士は、手を携えなければ。だって長い事、男の植民地だったんだから。

戦時中の様子は、どこの国の人も、死と隣り合わせだったんだなと、何度も何度も同じようなシーンを見ているはずなのに、感慨にふけりました。戦地に赴き、休暇中に亡くなった兵士の話しに、「無駄な死になってしまったのね」とカトリンが言うと、バックリーは「死に意味なんかない」と言います。名誉の戦死もない、と言うことですね。

自分の老いを認めないヒリアードの気持ちを変えたのは、エージェントのスミス(エディ・マーサン)から仕事を引き継いだ姉のソフィー(ヘレン・マックロリー)が、敏腕だったから。頑固爺に見えて、感性はしなやかだったのですね。彼はカトリンに「君や私に仕事が来るのは、戦争中だからだ」と言います。働き盛りの男がいない、と言う事です。正しくピンチはチャンス。

数々のドラマチックな愛と涙と笑いの展開も、バックリーの言葉の通り、映画は虚構だから出来ること。しかし、その虚構のお陰で、子供の頃のバックリーや、辛くて堪らない今のカトリンは、救われたのです。今までの涙は、男性の差し出すハンカチで拭いていたカトリンですが、ラストはそれを丁寧に断り、自分のハンカチで涙を拭う姿に、エールを送りたくなりました。

私のご贔屓ジェマは、最初これでもかと言うほど地味でしたが、段々と明るく溌剌としてゆくカトリンを好演。ますます彼女が好きになりました。バックリーの役柄は、私的にストライクど真ん中の役柄で、サムの名前も覚えておきたいです。落ちぶれ役者のビル・ナイは、すごく楽しそうに演じているのが、わかる(笑)。最後の方で味わい深さ炸裂でした。ソフィはヒリアードに「怪我が治ったら、もっと栄養をつけて太らなきゃ。あなたはまだまだハンサムよ」と、にっこり励まします。これで踊るんですから、男性は単純と言うか、何と言うか(笑)。

女性向けですが、男性にも是非観て頂きたい作品です。過去から学び、今を生きる女性たちがどう歩んでいくべきか?示唆に富んだ秀作でした。

11月27日(月)
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