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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「あゝ、荒野」(前後篇)
一見飄々としながら、試合で片目を失い、ボクサーとして不完全燃焼な感情を、新次と建二に託す堀口。最後の一花咲かせたいトレーナー(でんでん)。品がなく山師的ながら、愛嬌たっぷりで情の濃いジムの社長(高橋和也)。演じての好演も相まって、突出した個性を見せる登場人物の中、私が心に残ったのは、ジムの土地の持ち主で二代目と呼ばれる男性(川口覚)です。

華やかな新次の影に隠れた、地味な建二に関心を持ったのは、自分もそういう立場だからじゃないでしょうか?二人で食事するシーンでの、無邪気な彼は、決して金に飽かせて、建二をおもちゃ代わりにしたのでは、ないと思います。
体の弱い彼も、男性的な強さに憧れがあり、自分の代わりに建二に体現して欲しかったのでは?二人三脚の気持ちだったと思います。

不完全燃焼な自分、変化したい自分、成長したい自分。皆が皆、自分をぶつけるボクシング。その集大成が、ラストの壮絶な試合なのでしょう。現実では有り得ない試合ですが、一心な心と肉体がぶつかり続ける姿に、無性に涙が出て、止まりませんでした。とても辛いラストなのに、新次と建二と共に馳走した5時間の、カタルシスも味わいました。

「明日のジョー」の歌の最後は、「明日は、どっちだ」でした。新次の明日は、どこなのか?呆けた傷だらけの彼が見つめる先にいるのは、芳子か母か堀口か?私は芳子であってほしい。彼と共に人生を歩めるのは、芳子しかいないから。そして二人の明日が見つかった時、この愚かな母たちを、許してあげて欲しいのです。

10月30日(月)
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