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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「幼な子われらに生まれ」
「あなたは昔から理由は聞いても、その時の気持ちは聞いてくれないのね」と言う、友佳の台詞が秀逸。男ってそうだよなぁー、と一瞬思いましたが、待てよ、私も理由ばっかりで、夫や子供を責めた事があったじゃないか。何故だったんだろう?思い起こせば、一重に心身の余裕の無さです。この二人の離婚の理由も、見えてくる。一つの事を切欠に、あれもこれもと、昨日の事のように「元夫」を責め立てる友佳の姿は、まるで私だよと、苦笑しました。これは女性にありがちなことです。

何故信は、さおりとは馬が合うのか?それは娘の気持ちを第一に考えているからでしょう。友佳の言う、「気持ちを聞いてくれる」からです。様々な組み合わせを見せる中、一番相性の良い二人に感じました。信が変わろうとするきっかけも、さおりからです。さおりは実父をパパと呼び、継父をお父さんと呼び。薫は逆です。そうやって、区分けする姿だけでも、どれほど彼女たちの内面に屈託があるか、大人は考えて欲しい。さおりがこんな良い子に育ったのは、何故か?そこに思い至った信の、ここからの父親としての挽回の目覚しさが、本当に嬉しい。

カラオケで、信と同じ歌を独りで歌う佳苗。夫婦って似てくるんです。一見無神経に見える彼女の日常は、本当はストレスだらけなのがわかる。そこをしんみりとせず、破顔一笑して拍手してみせる信。私はこのシーンが、一番好きです。こうやって、野を越え山超え、怒ったり笑ったりしながら、この二人は「良き夫婦」になっていくと思います。

その他、エピソードのどれもこれもが、私の見知った話と合致し、とても身近に感じたのも、彼らに寄り添えた一端です。エピソードを詰め込んでも散漫にならず、上手い脚色だと思いました。

子供を連れての再婚も、昨今珍しいことではありません。私の母は、生前「子供のいる人とは結婚するな、子供を連れて再婚するな」と、口癖のように言っていました。身を持って、私に知らせたんだと思います。母も奈苗のように、必死だったのでしょうね。お陰さまで私は、その苦労は知りません。でも子連れの再婚は、悪でも不幸でもありません。そんな悩める人たちに、エールを送る作品だと思います。

08月30日(水)
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