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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「マンチェスター・バイ・ザ・シー」
この作品でオスカーを取ったケイシーは、若い頃小動物系の可愛さがあり、その手の男性は青春期を過ぎると、その点が仇となり、役に恵まれなくなりますが(この作品にも出ていたマシュー・ブロデリクもそれ系)、ちゃんと大人の男性の魅力を身に付けたなと、感心。もごもご喋るのは今も昔も一緒ですが、快活だった故郷にいる頃と、虚無感に捕らわれた現在、困惑・絶望など、無表情で演じきって、最高の演技でした。
少ない場面で、絶品の演技を披露する安定のミシェル。内面の葛藤を演じるのは難しかったはずのパトリックを若々しく演じたルーカスも良いです。しかしながら、脇で私が一番目を惹いたのは、カイル・チャンドラー。FBIだったりCIAだったり、果ては大富豪だったり、そんな役柄のチャンドラーしか記憶になかったのですが、市井の誠実な人を演じて出色でした。死後まで存在感を漂わし、今までの彼で一番好きです。
ラストは、一見何も変わらぬ日常に戻るリー。それでも「家は引っ越すよ。もう一部屋、ソファーを置いて。お前(パトリック)が遊びに来るだろう?」と言う言葉に、彼もやっと少しずつ、過去から這い上がったのだと感じました。そのソファーは、兄が生前リーに与えた物です。人間らしい暮らしをするようにと。パトリックがやがて妻を迎え、子も連れてリーを訪れる時、リーの本当の再生が始まるんだと思います。
凍てつく風景が目に焼きつくマンチェスター・バイ・ザ・シー。その風景に相応しい厳しさに身を置く人々を描きながら、雪解けのような暖かさまでを描いている作品。オスカー関連は何作か観ましたが、私はこの作品が一番です。私の持論は、オスカーは脚本賞を取った作品が、その年一番良いと思っていますが、私の中で裏づけされて、ちょっと嬉しい気分。一生心に残る大好きな作品です。
05月20日(土)
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