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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「最愛の子」
それと共に、今まで全く縁がなかったはずの法律の書物を持ち歩き、熱心に弁護士に法律を聞く彼女。ホンチンの造形は、地方の貧農での、学問の必要を説いていたのではないでしょうか?人は感情だけで生きて良いのではありません。道理も秩序も感情のコントロールも、学ばなければ得られないのだと痛感しました。ここに貧富の差だけではなく、作り手は、都会と地方の落差を訴えていたのだと思います。
あの皮肉で切ないラストは、一見無情のようですが、私は違うと思いました。ホンチンは、夫からポンポン以外に、嘘をつかれていたのでしょう。何よりも「家」の存続が大切だった夫。昔ながらの価値観に振り回されているのです。今も「家」の存続は大切ですが、それはあくまで「家庭」を基盤にしたものです。都会の溢れかえる離婚に辟易している裁判官を映し、夫の嘘の罪深さでホンチンを慟哭させたのは、新旧両方の価値観で揺れる中、何が本当に大事なのか?を、観客に見極める目を持って欲しいと、切望しているように感じました。
自己紹介の時、妹の存在も披露するポンポン。見守る両親。何の変哲もない情景ですが、ホンチンの身に起った事も含めて、私は新たな希望を、みんなが手にしたのだと思いたい。願わくはホンチンは深圳に留まり、その大きな目で世の中を観て、地方にはない情景をしっかり自分の中で消化してほしい。
この映画がきっかけとなり、誘拐に対する法律が改められたのだとか。素晴らしい事ではありませんか。エンドロールに、モデルとなった人々のその後が描かれます。モデル・作品上の架空の人々皆に、倖多かれと願わずにはいられません。
02月07日(日)
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