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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「ブリッジ・オブ・スパイ」
正義と善意、ファイトのあるドノヴァンを演じたハンクスは、彼の持ち味から誰もが納得のキャスティングです。還暦前を感じさせぬ若々しさで、本当に力を貰いました。弁護士ドノヴァンとして、アメリカ人二人の解放は本懐でしょう。しかし親愛の芽生えたアベルを、迎えの車の後ろに乗り込む姿を見送る事は、私人ドノヴァンとして、悔いと無念の残る気持ちであったでしょう。その時のハンクスの表情が本当に秀逸で、涙を見せないドノヴァンの代わりに、私が泣いてしまいました。
アベルを演じたライランスも、驚愕するほどの好演です。いつもポーカーフェイスで、抑揚のない演技の中、長年スパイとして暮らした、達観した孤独が匂い立ちます。知的な語り、絵の才能に恵まれた様子を映し、ドノヴァンが職業的矜持だけではなく、彼に好感を持った事も、頑張りの一つであったでしょう。ライランズは、私がずっと観たいと思って未見の、「インティマシー/親密」の主演で、これを機会に是非観ようと思います。
この二人の好演あってこそ、成し得た作品だと思います。
アベルは、「平凡な男が、何度も殴られても立ち上がり、とうとう不屈の男と呼ばれ解放された。その男に君は似ている」と、ドノヴァンに言います。今思えば、作り手が、平凡な男=平凡な市井の人々と言っていたのではないかと、思っています。平凡な人は、狡猾な権力に負けない不屈の人に成れるのだ、と言われたよう思えてなりません。
01月12日(火)
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