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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」
一つ嘘をつけばまた嘘をつかなければ行けない。束の間、友情に恵まれたチューリングを待ち受けていた無聊を慰めたのが、「クリストファー」と名付けたマシンであった事を描いた場面は、カンバーバッチ渾身の演技と相まって、号泣しました。最後まで彼の傍にいた「クリストファー」。何週も人生を回っても、チューリングの傍らにいたのは、最初から最後まで「クリストファー」だけだったと言う痛ましさ。これはマシンであったからでは、ないのです。
オスカー候補になったカンバーバッチは、今回クールな部分を見せる事もなく、時には無様で(マシュー・グードに俺の方がハンサムと言われるし)、理解されない天才の苦悩を好演で、彼の別の魅力を観た思いです。キーラはここ数年、本当に立派な女優になったと思います。コスプレから現代ものまで、様々なジャンルの主役を張り、充分な成果も出しているのに、ちっとも大女優然とはせず、新鮮味と軽やかさがずっと持続しているのがすごい。「私に花束はないの?」の、クスクス笑いながら手の平でチューリングを包み込む暖かさにも、とても感動しました。
チューリングにはコミュニケーション不全以外にも、秘密にしていたことがあります。そのせいで、エニグマ解読のお蔭で終戦は二年早まっただろうと言われているにも関わらず、彼の功績は長年封印されたいたそうです。何の罪科も無い事にも関わらず。自分を偽らず、嘘のない人生を歩めたら。自分が自分らしく、あなたがあなたらしく生きる人生を尊重したい。ムーアの脚色とスピーチは、この思いに尽きるのでしょう。
重厚な作りの中、イギリスらしい皮肉っぽいジョークにニヤリとする時が多々あり、一瞬の休息になる演出も洗練されていました。老若のイギリスイケメン俳優大集合の様相もあり、重たい話だと敬遠せず、今を生きる私たちだからこそ、観なくてはいけない作品だと思います。
03月15日(日)
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